1年目は仕組みをつくる年であり、後から直す年ではありません
当事務所が会計の立て直しを依頼される事業の多くは、悪意があって始まったわけではありません。1年目に、全員が顧客を探すのに追われて会計が後回しになり続け、決算の時期には、そろっていない書類の山と、由来を説明できない数字だけが残ります。
最も役に立つ事実は、会社の会計上の義務は、最初の収入があった日ではなく、登記した日から始まるということです。これを理解すれば、残りの作業の順序は一気にはっきりします。
本ガイドは、会社を登記したばかりの、あるいは登記しようとしている経営者で、1年目に何が待っているかを知りたい方のために書いています。
本ガイドは、タイの法人の会計上の義務に関する一般的な情報であり、特定の事業に対する会計または税務の意見ではありません。税率や数値基準も記載していません。これらの詳細は随時改定されるため、実際に手続きを行う日に、記帳担当者または顧問にご確認ください。
並行して進む三つの義務
新しい経営者は「会計をする」ことを一つの仕事と考えがちです。実際には三つの別の事柄であり、担当者も期限もそれぞれ異なります。
**一つ目、記帳。**実際に生じた取引を漏れなく正確に記録することです。毎月行う作業であり、その後のすべての土台になります。この層が不完全であれば、その上の層には取り組むものがありません。
**二つ目、定期的な申告。**月次と年次のサイクルがあり、事業にどのような義務があるかによって異なります。たとえば付加価値税の登録をしているか、源泉徴収をしているか、従業員がいるかです。重要なのは、取引のない月でもこれらのサイクルは進み続けるということです。
**三つ目、年次決算と監査。**会計年度が終わったら、財務諸表を作成し、認可を受けた会計監査人に監査を受けて意見を表明してもらい、期限までに提出します。
この三つは連鎖しています。ある月の作業が終わっていなければ決算できない財務諸表になり、決算できない財務諸表は提出の遅れになります。
誰が何をできるか、そしてなぜ別の人でなければならないか
新しい経営者が最も混乱する点であり、節約してはいけない点です。
記帳担当者は、事業の帳簿と財務諸表を作成する人で、法律で定められた資格が必要です。法人は、事業がどれほど小さくても、記帳担当者を置かなければなりません。
認可を受けた会計監査人は、作成された財務諸表を監査し、それについて意見を表明する人です。
**この二つの役割は、法律上、別の人が担わなければなりません。**理由は単純で、同じ人が作成も確認も行えば、自分の仕事を確認していることになり、会計監査人の意見が意味を持たなくなるからです。
会計事務所を選ぶときに経営者が尋ねるべきなのは、月額料金だけでなく、誰が記帳担当者になり、会計監査人は誰かということです。
最初の1か月にすべき四つのこと
1年目の大半は最初の1か月で決まります。この四つは、収入を待たずにすぐ実行できます。
1. 会社のお金と個人のお金を分ける
会社名義の銀行口座を開設し、会社の収入と支出だけに使います。支払い用のカードがある場合も、分けてください。
小さなことに聞こえますが、最も影響が大きい点です。二つの財布のお金が混ざると、どの取引が会社のものかを証明することは推測作業になり、あとから遡って行うことは現実にはできません。初日から分けている事業と、年末になって分ける事業とでは、決算にかかる時間が何倍も違います。
2. 仕入先に会社名で書類を発行してもらう
登記後の会社は事業主とは別個の法人であるため、会社の支出を裏づける書類は、必要な情報を備えて、会社名で発行されなければなりません。
実際には、1年目の経営者は個人だった頃と同じように購入を続け、1年中、自分の名前の領収書を受け取ってしまうことがよくあります。その結果、実際に生じた多くの支出が本来のようには活用できなくなります。対策は、取引の多い仕入先に最初から伝えることであり、後から追いかけて訂正することではありません。
3. 実際に続けられる書類の保管方法を決める
複雑である必要はありません。必要なのは、受け取った書類と支払った書類を置く決まった場所と、記帳担当者に渡す定期的なサイクルです。
必ず失敗するのは、「とりあえず保管して、年末にまとめて渡す」やり方です。途中で書類がなくなり、決算のときには、どれが何の取引だったか誰も覚えていないからです。
4. 1年分の申告カレンダーを見えるようにする
記帳担当者に、御社がどの申告をいつのサイクルで、何月に行う必要があるかを一覧にしてもらい、チームが見える同じ場所に保管してください。
これは1時間の作業で、1年分の問題を防ぎます。特に収入が不安定な事業では効果があります。そうした事業は、静かな月は何もする必要がないと考えがちだからです。
1年目の事業が最もよくつまずく点
収入がなければ申告は不要だと思い込む
最も高くつく誤解です。まだ事業を始めていない会社にも、帳簿をつけ、決算し、期限までに提出する義務があります。これは「ゼロ申告の財務諸表」と呼ばれており、「まだ何もしていないから」と放置することが、新設会社に科される過料の最も多い原因です。
書類なしに会社のお金を引き出して使う
多くの事業主が、会社のお金は自分のお金だと考えていますが、法律上はそうではありません。裏づけ書類のない引き出しは、帳簿上にあとで説明しなければならない残高を生み、調査を受けたときに質問される点になります。
正しい方法はあります。たとえば取締役報酬として支払う方法や、書類で裏づけられた他の形式です。ただし、最初から正しく設定しておく必要があり、1年分を引き出した後で整えるものではありません。
月額料金だけで会計事務所を選ぶ
最も安い料金は、たいてい送られてきた書類をそのまま記録するだけで、何が足りないか、何がおかしいかを指摘してくれる人がいないことを意味します。自分が何を知らないのかをまだ知らない1年目の事業にとって、節約できる報酬の差は、過料や後から是正する費用よりはるかに小さいのが普通です。
尋ねるべきことは、誰が記帳担当者か、会計監査人は誰か、書類はどのサイクルで送るのか、そして書類が足りないときに指摘してくれる人がいるか、です。
自分にどんな義務があるかを確認しない
事業ごとに義務は異なります。付加価値税の登録をしているか、従業員がいるか、源泉徴収が必要な支払いがあるか、どのような種類の事業を営んでいるかによって決まります。「他の会社がやっているようにやればよい」と考えることが、やりすぎと不足の両方の原因です。
過去の年度を処理していなかったと気づいたとき
思っているより頻繁に起こり、解決できないことではありません。
すべきことは、来年まで待たずに、分かった時点ですぐに対応することです。提出漏れのあった期間ごとに個別に是正する必要があり、放置するほど複雑になり、費用もかさむからです。
まず、手元にある書類、たとえば銀行の取引明細、収支の書類、契約書を集めます。そのうえで記帳担当者に、どの期間が漏れており、何をどの順序で行う必要があるかを評価してもらいます。こうしたケースでは書類がそろっていないのは普通であり、それでも作業は進められます。これ以上先延ばしにする理由にはなりません。
簡単なまとめ
- 会計上の義務は、収入が生じた日ではなく、登記した日から始まります。
- 記帳担当者と会計監査人は別の役割であり、別の人でなければなりません。
- 収入のない年でも、決算して財務諸表を提出する必要があります。
- 事業主が自分で行って最も効果があるのは、会社のお金と個人のお金を分けることと、書類を会社名で発行してもらうことです。
- 取引のない月でも、申告のサイクルは進み続けます。
- どの期間が漏れているか分かったら、分かった時点ですぐに対応してください。
これから会社を登記される方、登記したものの何をすべきか確信が持てない方は、当事務所の会計チームにご相談いただき、後から直すのではなく、最初から仕組みをつくってください。

