支払いが止まった瞬間から、時間は不利に働く
タイの取引先が「遅い」から「応答しない」に変わったとき、多くの外国債権者は督促を強めます。相手にまだ支払能力があるうちは正しい対応です。しかし相手が破綻に向かって滑り出しているなら、同じ反射が最も重要な数週間を浪費します。
破産・事業再生の手続には共通の特徴があります。すべての債権者の行動を一つの枠組みに集約し、各アクションに期限を課す ということです。期限を落とすと、たいてい取り返せません。
本稿は、その債権が回収可能か貸倒れかを取締役会に説明しなければならない与信管理・財務責任者のために書いています。
本稿は一般的な情報であり、個別事案への法的助言ではありません。最低債権額、各期限、否認の期間は法令で定まり改定されます。自社の債権に照らして現行の取扱いを弁護士にご確認ください。
1. 二つの道、一つの判断
- 清算型の破産 — 債務者の財産を換価し、順位に従って配当します。得られるのは配当率です。
- 事業再生 — 債務者が事業を継続し、認可計画に従って弁済します。得られるのは計画が定める条件です。
どちらが開始するかで回収見込みも、やるべきことも変わります。清算では順位と財産状況が、再生では計画内容と議決権が焦点になります。
2. 申立適格と、申立てが正しい手段かどうか
外国債権者は排除されません。検討されるのは、債権が確定・弁済期到来済みの金銭債権か、法定最低額に達しているか、支払不能またはその推定を基礎づける事実があるか、です。
ただし要件を満たすことと、申し立てるべきことは別です。 申立ては全債権者のために作用し、開始する手続は貴社が単独で進められたはずの個別執行を制限します。債務者に特定可能で差押え可能な財産が残り、他の債権者がまだ動いていない場面では、通常の民事訴訟と執行のほうが早く回収できることが多いのです。
申立てが本領を発揮するのは二つの場面です。疑わしい資産移動があり調査が必要なとき、そして手続開始の可能性を交渉材料として使いたいときです。
3. 自社の債権はどこに並ぶか
| 区分 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 担保付債権 | 目的物について優先するが、換価は手続に拘束される |
| 優先債権 | 法が一般債権に先行させる特定の類型 |
| 一般無担保債権 | 按分配当。回収率は通常最も低い |
| 関係者債権 | より厳しく精査される。特にグループ内取引 |
事前に確認すべきは「担保を取っているか」ではなく、有効に設定・登記されているか、範囲が債権額に見合うか、目的物に換価価値があるか です。いずれかが欠けると、実際の地位は最上段から最下段へ移ります。
4. 海外からの債権届出
手続開始後には届出期間があります。本手続で最も許容度の低い期限 であり、期間内に届け出なかった債権を後から通すことは実務上きわめて困難です。
外国債権者が通常必要とするもの:
- 基礎資料 — 契約、注文書、請求書、残高証明、引渡しの証憑
- 元本と利息を分けた債権額の計算書
- 担保関係書類と登記の証明(該当する場合)
- 会社存続証明と授権書類(公証・認証済み)
- 上記の認証済みタイ語訳
公証・認証・翻訳には時間がかかり、期限はそれを待ってくれません。 債権資料の整理と並行して着手してください。
5. 事業再生における議決権
再生計画は債権者を組に分けて決議されます。債権額と所属する組が影響力を決めます。
実務的な帰結は二つです。第一に、満額の届出は配当だけでなく議決権のためでもあり、過少な届出は両方を弱めます。第二に、組の中で意味を持つ規模の債権であれば、投票通知を待つのではなく債権者委員会と計画交渉に関与する価値があります。
6. 手続開始で権利はどう変わるか
- 個別執行 は通常制限または中止される
- 担保権 は存続するが、換価は手続の枠内に移る
- 所有権留保 は有効な合意と立証可能性に依存する。加工・転売されていれば主張は大きく弱まる
- 相殺 は一定の要件下で主張しうるが無条件ではなく、時点が重要
最も誤解が多いのは所有権留保です。供給契約に条項はあるのに、実際の納品プロセスが第三者に対抗できる証拠を残していない例が多く見られます。
7. すでに受け取った金銭が戻される可能性
支払不能に近接する期間の行為は否認されうるもので、典型は次のとおりです。
- 特定債権者への偏頗弁済
- 著しく不相当な廉価での財産処分
- 窮境を知った後に設定された新たな担保
窮境の兆候が出た後に通常と異なる返済・相殺・追加担保を受けていた場合は、手続開始前に助言を得てください。 否認を主張されてからでは対応コストが跳ね上がります。
8. 申立てか提訴か
| 民事訴訟と執行 | 破産申立て | |
|---|---|---|
| 適する場面 | 特定可能で差押え可能な財産がある | 財産不明、移動の疑い、圧力が必要 |
| 速さ | 債務名義まで通常より速い | 開始後は手続のペースに従う |
| 排他性 | 先に動いた者が先に回収しうる | 全債権者が同一枠組みに入る |
| 疑わしい取引の追及 | 手段が限られる | 否認の仕組みを使える |
| 費用 | 請求額に連動 | 手続を進める費用を負担する |
9. 予兆と最初の30日
予兆: 支払サイトの伸長、支払主体や入金口座の変更要請、監査人や財務責任者の交代、現物や株式での弁済提案、同業他社にも未払いが出ているという情報。
最初の30日:
- 与信を止める — 督促より先に出荷と新規与信を停止
- 証拠を固める — 契約、残高照合、引渡し、やり取りを提出可能な形に
- 担保と所有権留保が本当に主張可能かを検証
- すでに手続が開始されていないか、届出期間はいつかを確認
- 本国書類の公証・認証を並行して着手
- 方針が決まるまで、偏頗弁済と評価されうる一部弁済の受領を避ける
まとめ
| 状況 | すべきこと |
|---|---|
| 取引先が遅延し始めた | 与信を止め、証拠を固める |
| 他者が先に申し立てた | 届出期間と必要書類を直ちに確認 |
| 担保を保有している | 設定・登記・範囲・換価価値を検証 |
| 事業再生が開始した | 満額届出で議決権を確保し、計画に関与 |
| 直近に返済を受けた | 否認リスクについて先に助言を得る |
倒産局面の回収率を分けるのは、債権額よりも、最初の一か月に正しい動きをしたかどうかです。
当事務所は外国の供給者・貸主・合弁パートナーを代理し、貴社が渡航することなく申立てや届出を進めることができます。初回相談は無料です。+66 92 254 2045 までお電話いただくか、お問い合わせページからご事情をお知らせください。債権回収・強制執行ガイドも併せてご覧ください。
本ガイドはスワンナワラ法律事務所(1986年設立・コンケン)が作成しました。一般的な情報であり、個別事案への法的助言ではありません。