用地と売主は決まった。ここから何をするか
タイの大規模プロジェクト用地が、きれいな一区画であることはまずありません。複数の権利証、時に異なる種別の権利書面、時に異なる分筆の履歴から組み上げられており、しかも価格は誰かが登記簿を開く前に合意されているのが通常です。
本稿は、何を、どの順序で確認すべきか、そしてどの所見が価格の問題で、どれが停止信号かを整理します。
対象読者は、デベロッパー、プロジェクトスポンサー、EPC の用地担当、そしてオプション契約に署名し手付を承認する財務責任者です。
本稿は一般的な情報であり、個別事案への法的助言ではありません。費用・税・登記要件は個別の取引について確認してください。本稿が扱うのは この土地がクリーンかどうか です。外資系法人が保有できるか、どの経路で保有するかは別問題で、外国人の不動産ガイドをご覧ください。
1. 所有者一人、権利証七通が意味すること
商業的には好材料です。交渉一回、権限確認一回、支払スキーム一つ、そして一人の地権者に止められることもありません。
法的には作業を減らしません。各筆は個別に調査します。 権利証の種別、負担、通行、用途制限、境界位置は、数十年同一名義であっても筆ごとに異なりえます。取得時期、取得経路、分筆元が違うことが多いためです。
商業的には一回の交渉、法的には複数の調査 と捉えてください。
2. 価格より先に権利証を読む
タイの土地は種別の異なる権利書面で保有され、種別によってその土地に安全にできること——移転、抵当設定、金融機関への担保提供——が決まります。
プロジェクトの成否を分ける帰結が二つあります。
- 資金調達。 金融機関は種別の弱い権利書面への担保設定を拒むことがあります。所有権に問題がなくとも資金がつかない事態が起こります。
- 時間。 権利書面の格上げや是正は場合により可能ですが、前提として見込み、予算化し、確実にスケジュールできる工程ではありません。
分筆履歴も確認してください。大きな土地から最近分けられた筆は、その当時に登記されていたものを含め、親筆の履歴を引き継ぎます。
3. 現地を見ても決して見えない負担
土地の上に立っても、誰がその土地に権利を持つかはほとんど分かりません。公的記録から得るべきものは次のとおりです。
- 抵当権その他の登記された担保
- 債権者が登記した 差押えや執行の措置
- 当該筆の利益となる、または負担となる 地役権と通行権
- 登記された賃借権(売却後も存続しうる)
- 用益権、地上権、居住権
- 土地の原始的な付与に伴う 制限
そして登記簿とは別に、土地上の実際の占有者 です。賃借人、書面のない耕作者、長期占有者は必ずしも紙に現れません。手付の前に特定してください。所有者になってから対処するほうが、遅く、高く、不確実です。
4. 法的通行権とインフラ
最も多く見るプロジェクトの致命傷は、敷地への唯一の進入路が他人の土地を通り、登記された権利がない というものです。
「隣の人がずっと通してくれている」は通行権ではありません。いつでも撤回でき、その隣地が売却されれば存続せず、金融機関も受け入れません。
確認すべきこと:
- 公道と敷地を接続する 登記された 通行権
- 法的に足りるだけでなく、工事車両に物理的に耐えるか
- 電力・水・排水の経路が第三者の土地を通るか。通る場合、どの登記された権利に基づくか
5. 用途制限と土地分類
売主が「この土地はこう使える」と言うことは判断基準ではありません。都市計画と土地分類の制約、原始的付与に伴う制限、環境・農業上の保護区分は、交渉の場でのいかなる保証にも優先します。
承認手続を伴うプロジェクトでは、この確認は手付の 前 に属します。許認可の過程ではありません。また、単に費用がかさむだけでなく、真に致命的となりうる可能性が最も高い所見でもあります。
6. 境界・面積・筆の集合
複数筆の敷地では、権利証上の合計面積と、実際に建てられる面積は別の数字です。
- 筆ごとに 再測量 し、現地の境界標を確認する
- 隣接筆間の 重複と隙間 を探す。古い分筆では珍しくない
- 越境 を双方向で確認する
- 容量を再計算 する。後退距離、地役権、水路、使用不能な帯状部分は開発可能面積を減らし、その幅は無視できないことがある
実測後の有効面積ではなく権利証面積を前提に容量を置くことは、プロジェクト用地で最も高くつく誤りの一つです。
7. 売主の処分権限と支払構造
誰が本当に売れるのかを確認します。
- 登記名義人と、目の前にいる人物の一致
- 所有者が法人の場合 — 売却権限と必要な内部決議
- 相続により取得した土地の場合 — 遺産が適正に処理され、相続人が漏れていないか
- 夫婦財産の状態と、必要な配偶者の同意
- 同じ土地が既に他者に約束されていないか
そのうえで、登記または担保取得ができる範囲を超えて支払わない 構造にします。オプション契約や条件付契約、条件を明記して保管される手付、確認手順に紐づくマイルストーン、瑕疵判明時の返還条件です。
8. 現実的なスケジュールと、止まる箇所
調査を遅らせるのは三つで、いずれも法的分析ではありません。
- 各筆の 現行の公的記録の取得
- 測量の日程確保と完了
- 土地上の占有者の特定と処理
スケジュールはこの三点を軸に組んでください。取締役会の日程が「調査は交渉と並走する」と前提しているなら、答えが出る前に手付の期日が来ると考えるべきです。
9. 着手のために売主から必要な書類
- 敷地内すべての権利書面の写し(表裏)
- 各筆の取得の経緯と分筆履歴
- 売主の身分証明と権限を示す書類
- 抵当・賃借・地役権その他登記された権利の詳細
- 占有者の有無と、その根拠
- 既存の測量成果、敷地図、境界情報
- 当該土地に関する許認可・申請・当局との往復文書
まとめ
| 確認項目 | 撤退か、価格の問題か |
|---|---|
| 登記された法的通行権がない | 撤退 |
| 権利証の種別を金融機関が受け入れない | 資金調達としては撤退 |
| 用途制限がプロジェクトと両立しない | 撤退 |
| 抵当や登記された担保 | 価格と構造 |
| 土地上に占有者がいる | 価格・構造・時間 |
| 境界や面積の誤差 | 値付けの前に容量を再計算 |
デューデリジェンスは取引と並走する形式手続ではありません。複数筆のプロジェクト用地では、そもそも取引が成立するのかを教えてくれるものです。
当事務所はスポンサーとデベロッパーのプロジェクト用地取得を、権利確認から登記完了まで扱います。初回相談は無料です。+66 92 254 2045 までお電話いただくか、お問い合わせページからご事情をお知らせください。
本ガイドはスワンナワラ法律事務所(1986年設立・コンケン)が作成しました。一般的な情報であり、個別事案への法的助言ではありません。