ホテルの責任は、規則の異なる二つの問題に分かれます
オーナーはあらゆる出来事を「宿泊客からの請求」とひとまとめにしがちですが、法律上は明確に分かれた二つの問題があります。
- **宿泊客の負傷または死亡。**一般的な責任の原則が適用され、ホテル自身の過失、従業員の過失、建物や設備の管理不備に起因する過失があるときに責任を負います。
- **宿泊客の財物の紛失または損傷。**宿泊施設経営者には一般原則より厳しい特別の規則があります。ホテルは過失がなくても責任を負いますが、貴重品には上限があり、宿泊客が守るべき期限もあります。
まずこの二つを分けて考えれば、予防体制、証拠の保全、保険を的確に整えることができます。
1. 宿泊客の負傷:ホテルは過失があるときに責任を負います
ホテルには、自らが管理する場所を宿泊客にとって相応に安全に保つ義務があります。事故が起きやすい場所は次のとおりです。
- **プールとスライダー:**プールサイドが滑りやすい、水深表示がない、子ども用の柵がない、救命器具がない。
- **階段、バルコニー、手すり:**手すりが低い、またはぐらついている、段差が不揃い、照明が不十分。
- **浴室と濡れた床:**特にオープンタイプの浴室や磨いた石の床。
- **ガラスの扉:**見えるようにするシールやテープがない。
- **電気設備、給湯器、フィットネス機器:**定期点検をしていない故障した設備。
責任はさまざまな経路で生じます。
- **ホテル自身の過失:**たとえば、床が滑りやすいと知りながら、看板も置かず拭きもしなかった場合。
- **従業員の過失:**雇用された業務の範囲で行われたものです。雇用主であるホテルも連帯して責任を負います。
- 建物の欠陥または維持管理の不足。建物の占有者と所有者は、生じた損害について責任を負います。
宿泊客自身にも落ち度があった場合、たとえば酔ってバルコニーの手すりに登った、禁止の表示があるのに浅い側に飛び込んだ、といったときは、裁判所は損害がどちらの側にどれだけ起因するかを検討します。賠償額が減ることもあり、ホテルがまったく責任を負わないこともあります。
重大な事故では、過失により他人に重傷を負わせまたは死亡させたという刑事上の問題も生じ得て、警察がその場所の責任者であるマネージャーや従業員を取り調べることがあります。
2. 警告看板と免責同意書はどこまで役立つか
警告看板は、ホテルがリスクを知らせたことの証拠となり、宿泊客に落ち度があったかどうかの判断で大いに役立ちます。しかし、看板はリスクを解消することの代わりにはなりません。バルコニーの手すりがぐらついているのに、「寄りかからないでください」と掲示しても、ホテルは責任を免れません。
免責同意書と宿泊条件には重要な制限があります。ホテル、またはホテルが責任を負うべき者の故意または過失によって生じた生命、身体または健康に関する責任を、事前に免除または制限する合意や告知は、不公正な契約条項に関する法律により主張できません。
それでも、免責同意書には次のような使い道があります。
- カヤック、シュノーケリング、サイクリングなどのアクティビティについて、宿泊客がルールとリスクを理解したことを記録する。
- 宿泊客が申告した健康情報や制約を確認する。
- 宿泊客自身がルールに違反したと主張するときの証拠にする。
ただし、宿泊客の署名によって、ホテル自身の過失による責任を免れられると期待してはいけません。
3. 宿泊客の財物の紛失:宿泊施設経営者に関する特別の規則
民法には、宿泊施設経営者、宿舎、これに類する施設のための特別の章があります。経営者が知っておくべき要点は次のとおりです。
- **他人のせいで物がなくなった場合でも、ホテルは責任を負います。**ホテルに出入りする人の行為も含みます。宿泊客がホテルの過失を立証する必要はありません。
- **貴重品の上限は5,000バーツ:**現金や金、紙幣、手形、債券、株券、宝石、その他の貴重品が対象です。ホテルの責任は5,000バーツまでです。ただし、宿泊客がホテルに預け、価額を明確に申告した場合は除きます(古い資料には今も500バーツと書かれているものがありますが、改正前の数字です)。
- 貴重品でない財物(かばん、衣類、スポーツ用品など)は、この上限の対象外です。最高裁判所は、バイクは貴重品に当たらないと判断したことがあり、ホテルの駐車場からバイクがなくなった場合、ホテルがその全額について責任を負うことがあります。
- **例外:**損害が不可抗力、財物自体の性質、または宿泊客、その同行者、宿泊客が連れてきた人の落ち度によって生じたときは、ホテルは責任を負いません。
- **宿泊客はただちに通知しなければなりません。**これは価額を申告して預けていない財物についてです。紛失に気づいたのにすぐにホテルに通知しなければ、ホテルは責任を免れます。最高裁判所は、ホテルのマネージャーに伝えれば通知したことになると判断したことがあります。
- **責任を否定する看板は無効です。**宿泊客の財物についての責任を免除または制限するために掲示された告知は、宿泊客が明示的に同意しない限り効力がありません。
- **6か月の時効。**紛失または損傷についての訴えは、宿泊客がホテルを出た日から6か月以内に提起しなければなりません。
これらの規則から取るべき対応は、フロントで貴重品預かりサービスを提供することです。宿泊客が品目と価額を記入する預かり証を用意し、サービスがあることを看板で知らせ、紛失の届出があった場合にはただちに時刻とともに記録するようフロント係員を訓練してください。
4. 事故後の最初の24時間
初日に何をしたかが、その後数か月続く紛争の結果を左右することがよくあります。
- **まず負傷者のケアをします。**応急処置を行い、救急車を呼び、各手順の時刻を記録します。
- **片付ける前に現場を撮影します。**床の状態、警告看板、照明、手すり、関係する設備を撮ります。
- **防犯カメラの映像を直ちに取り出して保存します。**多くのシステムは数日から数週間で上書きされます。事故が起きた瞬間だけでなく、前後の相応の時間分を保存してください。
- **事故の記録を作成します。**誰が見たか、誰が助けたか、宿泊客が何を言ったか、酔っていたか、誰と一緒にいたか。関係した従業員に、その日のうちに自分で書かせます。
- **維持管理の記録を集めます。**床清掃表、プール点検表、修理依頼書、電気設備の証明書です。
- **保険会社に通知します。**保険証券が定める期間内に行います。
- **保険会社と話す前に、責任を認めたり、書面で支払いを約束したりしないでください。**多くの賠償責任保険は、被保険者が同意なく責任を認めたり支払いに同意したりすることを禁じています。宿泊客への思いやりを示し、手助けすることはできますし、すべきですが、責任の承認とは切り離してください。
- **警察に届け出ます。**重傷または死亡の場合、あるいは宿泊客が自分の保険に請求するために警察の届出が必要な盗難事件の場合です。
防犯カメラの映像と宿泊客の情報は個人データです。相手方の弁護士や保険会社に渡すときは、適切な経路と正当な理由で行ってください。あわせてホテルの宿泊者登録、TM.30、防犯カメラとPDPAをご覧ください
5. 外国人宿泊客の弁護士や保険会社から連絡が来たとき
外国人宿泊客の多くは旅行保険に入っています。保険会社がまず治療費を支払い、その後宿泊客の権利を代位してホテルに求償します。書面は多くの場合、事故から数か月後に英語で届き、宿泊客の本国の水準で費用を請求してきます。たとえば、航空機による搬送費、継続治療費、収入の喪失などです。
対応すべきこと
- **宿泊客はもう帰国したからと思って、無視してはいけません。**タイの裁判所で訴えることができ、宿泊客はサービスの利用者として消費者事件の形で訴える可能性があります。その場合、プールや建物の維持管理など、事業者自身が知り得る事実については、ホテル側に立証責任があります。
- **ただちにホテル自身の保険会社に回付し、**返答は保険会社または弁護士に任せます。
- **金額の交渉に入る前に、裏付け書類を求めます。**診断書、領収書、代位に関する書面などです。
- **合意に至ったら、書面で和解契約を結びます。**一回限りで完全に解決する支払いであること、宿泊客と代位した保険会社の双方を対象とすること、全員が理解できる言語を使うことを明記します。
6. 第三者賠償責任保険
第三者賠償責任保険(public liability)は、一度の重大な事故が事業の耐えられない負担になることを防ぐ主な手段です。保険証券を読むときは次の点を確認してください。
- **1事故あたりおよび年間の限度額:**外国人宿泊客の治療費や医療搬送費に足りるか。
- **宿泊客が補償の対象に含まれているか。**また、プール、フィットネス、ホテル前のビーチなど、宿泊客が使うすべての場所が対象に含まれているか。
- **免責事項:**ウォータースポーツ、アルコール飲料の提供、請負業者の作業など。
- **宿泊客の財物に対する補償:**多くの場合、負傷に対する賠償責任とは別に追加で購入する必要があります。
- **訴訟対応の費用:**限度額に含まれるか、別枠か。
- **被保険者名が事業者と一致しているか。**ホテルが法人名義で営業しているのに、保険が土地所有者の名義になっていると、請求時に問題が生じることがあります。
スパ、ツアー、ウォータースポーツなどのアクティビティを外部の事業者に任せている場合は、その事業者が自前の保険に入っていること、そして宿泊客が負傷したときに誰が責任を負うかが契約に定められていることを確認してください。あわせて保険金請求を拒否されたときの対処法をご覧ください
7. ヴィラや貸別荘にも同じリスクがあります
過失による責任は**規模や許可の有無に左右されません。**1日単位で貸すプールヴィラを数棟持つオーナーも、宿泊客の溺水やバルコニーからの転落のリスクはホテルと変わらず、しかも常駐スタッフがいないことが多いため、設計と掲示にいっそう頼る必要があります。
- 子連れの家族のためにプールの周囲に柵または門を設ける
- 水深表示とプールの利用ルールを、英語と主な宿泊客層の言語で掲示する
- 客室に緊急連絡先と最寄りの病院の場所を掲示する
- 一般的な居住用の住宅保険ではなく、商業的な賃貸を対象とする保険に加入する
宿泊施設が法律で求められる許可の取得や届出をまだ行っていない場合、宿泊客の負傷事故はその問題も表面化させます。許可の順序についてはホテルや宿泊施設を開業するには、どの許可が必要かをお読みください
宿泊施設オーナー向けチェックリスト
- 四半期ごとにプール、バルコニー、階段、浴室、ガラスの扉などのリスク箇所を巡回点検し、点検記録を残す。
- 濡れた床とプールの管理表を作り、従業員が実際に署名する。
- 水深表示、プールのルール、避難経路を外国人宿泊客にも分かるようにする。
- 防犯カメラを十分な期間映像が残るように設定し、すぐに映像を取り出して保存できる担当者を置く。
- 夜勤の従業員でも使える事故記録用紙と保険会社への通知手順を用意する。
- 価額を記入する預かり証付きの貴重品預かりサービスを提供し、看板で知らせる。
- 宿泊条件と免責同意書を見直し、主張できない免責条項が含まれていないようにする。
- 賠償責任保険の限度額、免責事項、被保険者名を確認する。
- 宿泊客向けのアクティビティを提供する外部事業者の契約と保険を確認する。

