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ビジネス法務

SaaS事業者がサービスを終了するとき:データと業務を取り戻す方法

SaaS事業者のサービス終了に直面した利用企業向けガイド。最初の72時間、データ書き出しの権利、移行期間、契約解除と損害賠償、PDPA上の義務、代替サービスへの移行を解説します。

スワンワラ法律事務所— ビジネス法務チーム2026年10月28日12 min read
SaaS事業者がサービスを終了するとき:データと業務を取り戻す方法

自社の日常業務がSaaSに支えられている場合、たとえば作業指示、会計、顧客管理、予約管理のシステムなどです。ある日、事業者から「サービスを終了します」とメールが届きます。すぐに次の疑問が浮かびます。何年分もの顧客データや作業履歴は戻ってくるのか。移行期間中は誰が責任を負うのか。前払いした料金は返るのか。署名済みの契約は何を認めているのか。

本ガイドは利用企業の立場で書いています。SaaSの料金モデルとサブスクリプション契約、ソフトウェア開発契約とソースコード、MSA・SLAの月額サービス契約とあわせてお読みください。管理者アカウントやドメインが退職者の手元にある場合は、従業員やエージェンシーがFacebookページ・LINE OA・ドメインを返さない場合をご覧ください。

結論

サービス終了の告知を受けたら、順番に3つのことを行います。まず全データを書き出す。次に、移行期間や削除確認書など、事業者がなお負う義務を契約に基づいて求める。そのうえで返金と損害賠償を検討する。データを取り戻すことは、お金を取り戻すことよりも早く事業に影響します。

法的根拠 両者の関係は契約によって決まり、契約は慣習に配慮しつつ信義誠実に解釈されます(民商法典第368条)。事業者が履行しない場合、自社は第386条から第391条に基づき契約を解除して原状回復を求め、第222条により損害賠償を請求できます。データに個人データが含まれる場合、自社は個人データ保護法 B.E. 2562 第37条の義務を負う管理者であり、処理者である事業者は第40条の義務を負います。

当事務所の実務的な見方 問題は、法律が権利を認めていないことよりも、時間と証拠にあることが大半です。終了する事業者は通常まずサポートを縮小し、告知より早くシステムを止めることもあります。ほかの交渉に入る前に、自社でデータの写しを完成させてください。

仮想事例 コンケンのエアコン修理・設置会社(以下「エアコン会社」)は、SaaSで技師の手配、顧客の機器履歴、現場写真を3年分管理しています。事業者は60日後に終了し、その14日前に書き出し機能を無効にすると告知しました。この事例を本ガイド全体で用います。

1. 最初の72時間で何をするか

法的な答えがすべて出るまで待つ必要はありません。取り返しのつかないことから先に行います。

  • 契約書と通知を読む 実際の終了日、書き出しが止まる日、解除条件、顧客データに関する文言を確認します。告知メールは証拠として保管します。事業者から届いた書類は、権利放棄の条項が含まれている可能性があるため、読まずに承諾や署名をしないでください。
  • 直ちにすべて書き出す システムの書き出し機能を使い、APIがあれば別の写しも取得します。保管先は特定の従業員のメールボックスだけにせず、会社が管理できる場所にします。
  • システム内にしかないものを一覧にする 編集履歴、添付ファイル、コメント、テンプレート、定期レポート、ユーザー権限などです。書き出しファイルはすべてを含まないことが多いためです。
  • 責任者を1名決める 予備の担当者も置き、事業者との窓口と経営陣への報告を一本化します。

仮想事例 エアコン会社は初日に書き出しを行い、ファイルには顧客と作業指示はあるが写真と編集履歴がないことに気づきました。そこで事業者に、これらを別に提供するよう書面で求めました。

2. 契約には何を定めるべきか(既存契約の確認と新契約の起案に使う)

既存契約に不足があれば、移行に関する合意書で追加を求めます。新しいシステムを選ぶ場合は、署名前に盛り込みます。

項目記載すべき内容
データの帰属会社およびその顧客が入力したデータは会社のものであり、事業者はサービス提供のためにのみ利用する
書き出しの権利いつでも、全種類のデータを、CSV、JSON、元ファイルなど再利用できる形式で、データ構造の説明付きで書き出せる
移行期間サービス終了後も一定期間、閲覧と書き出しができる
支援サービス書き出しと移行の質問に事業者が対応する。費用がかかるかどうかも明記する
削除と確認書定めた期間内にバックアップを含めて削除し、削除確認書を書面で発行する
重要システム向けのエスクローソースコードや環境を第三者に預け、事業者が事業を停止した場合に開示する
提供終了の事前通知移行に足りる長さの通知期間
前払料金の返還事業者の都合でサービスが終了する場合、未使用分を返還する

これらについて法律が定める固定の数値はなく、システムの重要度に応じて合意します。契約が定めていない場合は第368条の信義誠実な解釈に頼れますが、後で争うより書面にしておくほうが確実です。

3. 事業者が契約違反をした場合、解除と損害賠償はどこまでできるか

自社の同意なく契約期間の途中でサービスを終了することは、債務不履行にあたる可能性があります。自社は履行を求めることもできますが(システムが停止した後は通常不可能です)、契約を解除することもできます。

  • 契約解除 契約または法律に基づく解除権がある場合、第386条から第391条によります。場合によっては、まず相当の期間を定めて履行を促す必要があります(第387条)。解除は書面で通知します。
  • 原状回復 解除すると、各当事者は受け取ったものを返します。事業者は未使用の前払料金を返し、自社はサービスの利用をやめ、返すべきものを返します。
  • 損害賠償 解除しても損害賠償請求権は失われません(第391条)。賠償額は、移行費用やデータ再入力の人件費など、立証できる損害と、契約上の責任制限条項によります。自社側にも過失があれば、第223条により減額されることがあります。

注意すべき点は、これらの権利が必ずしも現金につながらないことです。事業者に資力がない場合や支払不能の場合は、5.をご覧ください。

4. PDPA:自社は管理者、事業者は処理者

顧客、従業員、連絡先のデータを保管するSaaSでは、通常、自社が個人データの管理者、事業者が処理者です。これは両面に影響します。

  • 管理者の義務(第37条) 処理者が個人データを不正に利用・開示しないよう措置を講じ、保存期間が過ぎたとき、または不要になったときにデータを消去・破棄します。停止したシステムにデータが残り、その行方も分からない状態は、自社自身のリスクです。
  • 処理者の義務(第40条) 管理者の指示に従って処理し、安全管理措置を講じ、漏えいがあれば管理者に通知します。これは、自社が返却と削除を求める根拠になります。

書面で求めてください。まず返却し、その後にバックアップと再処理者を含めて削除し、書面での確認を求めます。削除は検証できなければなりません。終了の過程で情報漏えいが起きた場合は、情報漏えい発生時の初動とPDPA対応チェックリストをご覧ください。

5. 事業者が支払不能、または資金がない場合

事業者が破産申立てを受けた、または再建手続中である場合は、特に慎重に対応してください。

  • 前払料金と損害賠償は、破産手続を通じて届け出る債権です。一部しか回収できない、または遅れて回収することがあり、すぐには支払われません。
  • データへのアクセスは、事業者の資産を管理する者に左右されることがあります。その者に宛てて、自社のデータの書き出しを求める書面を出してください。
  • 自社のデータは事業者の資産に含まれないはずですが、実際には、どのデータが誰のものかを示す証拠が必要です。

これは事実関係と裁判所の判断によります。破産手続には法定の期限があるため、債権を届け出る前にご相談ください。

6. 代替サービスの選定と移行

  • 実データで試す 書き出したデータを新システムに取り込み、項目、日付、添付ファイルが揃っているか確認します。
  • 契約を比較する 署名前に2.の項目を確認し、新しい事業者の財務状況も相応に確かめます。
  • 並行運用する 旧システムを止める前に、短期間、新旧を並行して使います。
  • 個人データがある場合 新しい事業者とデータ処理契約を結び、必要に応じて関係者に通知します。新しいツールがAIを使う場合は、社内AIポリシーと顧客データをご覧ください。

7. 社内で管理者アカウントとAPIキーを持つのは誰か

管理者アカウントが退職者の名義になっていたり、誰も覚えていない別システムにAPIキーが埋め込まれていたりする会社は少なくありません。主管理者アカウントには会社のメールを使い、管理権限を少なくとも2名に付与し、APIキーと連携システムの一覧を保管し、移行が済んだら旧システムに紐づくキーを更新または失効させてください。引き継ぎの実務は取締役辞任時の引き継ぎチェックリストをご覧ください。

表の例:データ・業務の項目別管理

項目保管場所書き出し形式責任者期限
顧客・連絡先リストSaaSシステムCSV営業マネージャー72時間以内
作業指示とサービス履歴SaaSシステムCSVまたはJSON技師長72時間以内
写真と添付ファイル事業者のファイル保管領域ファイル名一覧付きの元ファイルシステム管理者第1週
見積書と請求書SaaSシステムPDFとCSV経理第1週
編集履歴とコメントSaaSシステム事業者に別途依頼システム管理者書き出し停止前
ユーザー権限と管理者アカウントSaaSシステムスクリーンショットと一覧システム管理者第1週
APIキーと連携システムSaaSおよび接続先システム一覧と接続方法システム管理者第1週
データ削除確認書事業者書面の確認書主責任者移行完了後

データ書き出しと移行支援の依頼書(例)

件名:サービス終了前のデータ書き出しおよび移行支援のお願い
[事業者名] 御中

[日付]付のサービス終了のお知らせおよび[日付]付のサービス契約に関し、
[会社名]は貴社に次の対応をお願いします。

1. システム内の当社の全データ([データの一覧])を、[CSV/JSON/元ファイル]の形式で、
   データ構造の説明を付けて、[日付]までに書き出すこと。
2. [日付]まで、閲覧と書き出しができる状態を維持すること。
3. 移行を支援し、担当者と費用(ある場合)を書面で通知すること。
4. 当社がデータを全て受領したことを確認した後、バックアップを含む全データを削除し、
   削除確認書を書面で発行すること。
5. 未使用の前払料金の返還方法を[日付]までに通知すること。

本書は、当社のいかなる権利・請求権も放棄するものではありません。
当社の連絡先:[氏名、役職、メール、電話番号]

敬具
[氏名、役職]

チェックリスト:SaaS事業者がサービス終了を告知したとき

最初の72時間

  • 告知メールを保管し、契約書を読み、終了日と書き出し停止日を控える
  • 全種類のデータを書き出し、会社が管理できる場所に保管する
  • システム内にしかないものを一覧にする
  • 主責任者と予備の担当者を決める

事業者との取り決め

  • 書き出しと移行期間を求める書面を送る
  • 支援サービスと費用(ある場合)を合意する
  • 前払料金の返還方法を確認する
  • 権利放棄の書類は確認せずに署名しない

個人データとリスク

  • 返却の後に削除することを求め、削除確認書を書面で依頼する
  • 再処理者やバックアップの有無を確認する
  • 事業者に資金面の問題がある場合は、債権の届出について相談する

移行

  • 新システムに実データを取り込んで試す
  • 新契約を2.の項目と比較する
  • 管理者権限とAPIキーを移し、旧来のものを失効させる

関連ガイド

当事務所は、既存のSaaS契約の確認、事業者宛ての書面の起案、新しい契約書の作成、事業に合わせたPDPA対応の整備をお手伝いします。初回相談をご希望の方は、+66 92 254 2045 までお電話いただくか、詳細をお送りください。あわせてPDPAとデータ保護と契約書・ビジネス文書の作成もご覧ください。


本ガイドはスワンワラ法律事務所(コンケン県の法律事務所、1986年設立)が発行したものです。一般的な情報であり、特定の事項に関する法的助言ではありません。

Frequently asked questions

SaaS事業者がサービス終了を告知したとき、最初にすべきことは何ですか+

契約書と通知を最後まで読み、事業者の申し出を待たずにすぐ全データを書き出してください。そのうえで、システム内にしかないものを一覧にし、責任者を1名決めます。1.をご覧ください。書き出しは短い期間しか使えないことがあり、閉鎖された管理者アカウントは多くの場合取り戻せません。

契約にデータ書き出しの定めがなくても請求できますか+

方法はあります。業務データや顧客データは事業者ではなく自社のものであり、契約は民商法典第368条により信義誠実に解釈されます。個人データがある場合、処理者である事業者は個人データ保護法第40条により管理者の指示に従う必要があります。ただし実際の結果は事実関係と契約の文言によります。2.と4.をご覧ください。

契約期間の途中でサービスが止まった場合、契約を解除して返金を求められますか+

事業者が約束したサービスを提供しない場合、自社は第386条から第391条に基づき契約を解除できます。場合によっては、まず相当の期間を定めて履行を促す必要があります(第387条)。解除後は当事者が原状に復し、第391条および第222条により損害賠償も請求できます。ただし実際に回収できるかは事業者の支払能力によります。3.と5.をご覧ください。

SaaS事業者が支払不能になった場合、自社のデータはどうなりますか+

データは引き続き自社のものですが、アクセスは事業者の資産やシステムを管理する者に左右されることがあります。損害賠償や前払料金は破産手続を通じて届け出る債権であり、すぐには支払われません。できるだけ早く書き出し、システムを管理する者に書面で連絡してください。5.をご覧ください。

管理者の立場で、終了する事業者に対して何をすべきですか+

個人データ保護法第37条により、管理者は他者に処理させる場合に不正な利用や開示を防ぐ措置を講じ、保存期間が過ぎたデータを消去する必要があります。そのため、事業者にデータを返却させ、削除させ、削除確認書を書面で出させ、証拠を保管してください。4.をご覧ください。

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