年末が近づくと、人事担当者は毎年同じ質問を受けます。「今年は賞与がありますか。何か月分ですか」。使用者側は、賞与とは事業が好調なときに支払う報奨だと考えがちです。一方、従業員側の少なからぬ人は、賞与を毎年支払われる収入の一部だと考えています。この食い違いは、多くの場合、契約書、通知、採用通知書にある数行の文言から始まり、利益が落ちた最初の年に紛争へ発展します。
本ガイドでは、確定的な賞与と裁量による賞与の違い、明確な方針の書き方、減額または不支給にするときの伝え方を説明します。変動報酬の設計を扱った営業KPIとコミッション制度の設計の続きであり、すでに合意した条件を変更する場合は賃金・労働日・福利厚生の引き下げとあわせてご利用ください。
結論
賞与が権利か裁量かは、名称では決まりません。使用者が何を書き、実際に何をしたかで決まります。「第13月給与」のように、確定した額または計算できる額を約束する文言であれば、請求可能な債務となる可能性が高いです。結果や業績に応じて使用者の判断で支給することがあると書かれ、使用者が実際にそのとおりに運用していれば、裁量であることの重みになります。ただし、長期にわたる無条件の支給履歴は、当初の文言の効力を弱めることがあります。
法律上の根拠 賃金は労働者保護法B.E.2541第5条で定義され、第118条の退職補償金や時間外手当の計算に結び付きます。雇用条件は労使関係法B.E.2518第5条で定義され、労働日・労働時間、賃金、福利厚生、解雇、その他雇用上の利益に関する条件を含みます。従業員が20人以上の使用者は、第10条により雇用条件に関する書面の合意を持たなければならず、合意がない場合は第11条により就業規則が合意とみなされます。個別契約は、従業員に有利な場合を除き、第20条により合意に反してはなりません。契約文言は、民商法典第5条および第368条により、信義誠実と取引慣行を考慮して解釈され、疑義は第11条により義務を負う側に有利に解釈されます。
当事務所の実務的な見方 問題の多くは、賞与がないことではなく、使用者が二通りのことを言うことから生じます。契約書には裁量と書きながら、経営陣が従業員に「毎年最低2か月分は出る」と話すような場合です。よい方針は、文書の文言、実際に使う基準、経営陣の発言の三つをそろえます。
仮想事例 コンケンにある従業員60人の会社「セーンイサーン建設」は、8年にわたり「会社は業績に応じて賞与の支給を検討することがある」と通知してきました。ところが毎年、書面の評価基準なしに、全従業員に同額の月給2か月分を支払ってきました。9年目に利益が大きく落ち、経営陣は0.5か月分を支払いたいと考えています。本ガイドではこの事例を通して使い、会社を「セーンイサーン」と呼びます。
1. 確定的な賞与と裁量による賞与はどう違うのか
実務上、賞与は大きく二つに分けられます。一つは、第13月給与や契約書に定めた固定賞与のような確定賞与です。もう一つは、会社の業績や個人の成果に連動する変動賞与です。下の表で比較します。
| 項目 | 確定的な年次賞与(例:第13月給与) | 業績・成果連動賞与(裁量) |
|---|---|---|
| よくある文言 | 「会社は…か月分を支給する」「第13月給与」 | 「会社は支給を検討することがある」「業績と成果に応じる」 |
| 金額 | 確定額、または固定の計算式で算出 | 利益、目標、評価点に応じて変動 |
| 使用者が一方的に不支給とする場合 | 危険。契約違反となり請求される可能性 | 文言と実際に用いる基準に沿い、信義誠実であれば可能 |
| 主なリスク | 事業が苦しくても拘束される | 支給履歴や経営陣の発言により期待に変わる |
| 法定の賃金計算への影響 | 通常の労働の対価として固定で支払うなら賃金とみられやすい | 一般に報奨とみられるが、事実による |
| 向いているもの | 年収を固定したい職種 | 成果が測れるチーム、利益が安定しない事業 |
多くの会社は、固定賞与に変動分を上乗せする混合型を採っています。それ自体は問題ありませんが、二つの部分を文書で明確に分けなければ、変動分が固定分と一体に読まれる可能性があります。
2. 契約書・通知の文言:権利の有無を決めるもの
紛争になると、裁判所や労働監督官はまず文書を見ます。雇用契約書、通知、就業規則、メール、採用通知書などです。次に、実際の運用がそれと合っているかを見ます。文言で確認すべき点は次のとおりです。
- 動詞 「支給する」と「支給することがある」は大きく異なります。同じ文書に両方ある場合は統一してください。
- 支給に結び付く条件 支給の前提となる利益水準、成果水準、取締役会の承認を明記します。無条件の文言は債務と読まれやすくなります。
- 誰がいつ決めるか 誰が、いつ、どの情報に基づいて検討するかを書きます。
- 権利の留保 業績の悪い年には、事前通知のうえ変更・減額・不支給にできると書きます。留保は有益ですが、すでに確定額として合意した金員には使えず、信義誠実に反する判断を正当化するものでもありません。
- 文書の層 個別契約、就業規則、年末の通知、会議での発言は一致させます。食い違う場合、従業員は自分に最も有利な内容に依拠しがちです。
セーンイサーンの通知は「検討することがある」と書いており、裁量の文言です。弱点は8年間の運用で、次のセクションにつながります。
3. 長年支給してきた場合、やめられるか:支給履歴と雇用条件
最もよくある質問は、条件なしで毎年何年も支給してきた賞与は権利になるのか、というものです。最も正確な答えは事実によるというものですが、次の要素がよく考慮されます。
- 継続性 何年支給したか。支給しなかった年はあるか。
- 金額の一貫性 全員・毎年同額か、実際の成果に応じて変動していたか。
- 条件の有無 基準を通知して実際に適用したか、成果と無関係に支給したか。
- 使用者の言葉 賞与は裁量だと伝えたことがあるか、報酬の一部だと説明したことがあるか。
- 生じた期待 従業員がその賞与を前提に家計を組んだり、採用の申出を受けたりしたか。
法的には、従業員は、広く知られるほど一貫して支給された賞与は、労使関係法B.E.2518第5条の「雇用条件」の一部であると主張し得ます。雇用条件には、賃金、福利厚生、その他雇用上の利益が含まれます。すでに従業員に有利な条件を使用者が変更したい場合は、従業員との合意や、要求手続(第13条)など、法の定める手段を検討する必要があります。また、第20条は、従業員に有利でない限り契約が合意に反してはならないと定めています。ただし、これは従業員が主張し得る論点であり、確定した結論ではありません。各事案の結論は文言、履歴、証拠によって異なるため、本ガイドでは特定の最高裁判所の判決を引用しません。
使用者がリスクを下げるためにできること
- 賞与は裁量であり、その年の業績と成果によるという文言を、毎年の通知に入れる。
- 通知した基準を実際に使い、評価を記録する。基準なしに全員へ同額を支払って裁量と呼ばない。
- 経営陣は「毎年必ず出る」「いつもと同じ」と言わない。
- 不支給または減額の年は、基準に従い、理由を透明に伝える。セクション8を参照。
セーンイサーンでは、8年連続で基準なしに同額の2か月分を支払ってきたことが、従業員に有力な主張の余地を与えます。経営陣は、直ちに0.5か月分への減額を通知するのではなく、まず進め方について助言を得るべきです。
4. 賞与は「賃金」か、なぜ重要か
労働者保護法B.E.2541第5条は、賃金を、使用者と従業員が雇用契約に基づく労働の対価として使用者が支払うことで合意した金員で、就業日の通常の労働時間における労働に対するものと定めており、休日や休暇のために働かないが法律上受け取る権利のある金員も含みます。この定義は、最終の賃金額を基準とする第118条の退職補償金や、時間当たり賃金率を基準とする時間外手当など、複数の計算に影響します。
| 賞与の性質 | 法的傾向 | 計算への影響 |
|---|---|---|
| 通常の労働の対価として、毎月または毎年固定で定期的に支払う | 賃金とみられやすい | 退職補償金や時間外手当の算定基礎に入る可能性 |
| 利益や成果に応じて変動する報奨 | 通常の労働の対価ではないとみられることが多い | 一般に算定基礎に入らないが、文言と実際の支払を確認 |
| 特定の事由による一回限りの特別支給 | 一般に特別な支給 | 一般に算定基礎に入らない |
この表は一般的な目安であり、確定的な結論ではありません。裁判所は事実と支払の目的を個別に見ます。「賞与」と呼んだだけでは決まらず、「報酬」と呼んでも賃金になるわけではありません。使用者は賞与の目的を明確に書き、実際には通常の労働の対価であるものを賞与の名目で支払わないようにすべきです。従業員を解雇して退職補償金を計算する場合は退職補償金と解雇を、未払金の紛争は未払賃金と時間外手当をご覧ください。第13月給与を賃金の上乗せとして支払う場合は、他の権利への影響について事前に助言を得てください。
5. 誰が受給できるか:支給日在職、按分、試用期間、懲戒
賞与方針には、受給資格者を書くべきです。よくある条件と公平性の限界は次のとおりです。
| 条件 | 条項例 | 注意すべき限界 |
|---|---|---|
| 支給日に在職 | 支給日前に退職した者は対象外 | 明確に書き全員に適用するなら可。ただし正当な理由なく解雇した従業員が支給日に届かないようにするのは不可 |
| 期間按分 | 年の途中の入社・退職者は勤務月数分 | より公平。月数の数え方を明記する |
| 試用期間 | 試用期間を通過した者のみ、または按分 | 可。ただし通過後に遡って月数を数えるかを明記 |
| 懲戒歴 | その年に懲戒を受けた者は減額または不支給 | 基準が明確で評価と結び付くなら可。二重の処罰にしない |
| 病気休暇・産前産後休暇・法定休暇 | 適法な休暇だけを理由に賞与を減らさない | 法定の休暇の取得を理由とする減額は不公正とみられるおそれ |
重要な原則は、条件を事前に書き、全員に等しく適用し、法定の権利に反しないことです。不公正な条項は労働者保護法第14/1条により審査される可能性があり、懲戒は第108条の就業規則に従う必要があります。就業規則にない制裁として賞与を使うべきではありません。
6. 評価基準と記録
成果連動賞与は、基準が明確で記録の裏付けがあってはじめて堅実になります。
- 会社レベルの基準 賞与の有無を決める指標(純利益、売上、キャッシュフローなど)と承認者。
- 個人レベルの基準 年初に合意した目標、各指標の比重、点数の付け方。
- 評価期間 評価サイクルの開始日と終了日。
- 評価者と見直し 誰が採点するか、従業員が結果を見られるか、不服申立ての手段があるか。
- 記録 目標設定の書面、年間の進捗メモ、年末のまとめ。
従業員の成果が基準を下回り、賞与に影響する場合は、年末に初めて伝えるのではなく、年間を通じて伝えるべきです。関連する進め方は使用者のための業績改善計画(PIP)とKPIをご覧ください。家族経営で親族が働いている場合も、他の従業員と同じ基準を適用してください。家族経営における役割と報酬を参照してください。
セーンイサーンは、まず来年の基準を書き、年初に個人目標を設定し、評価を記録することから始めるべきです。そうすれば、来年の賞与は名目だけでなく実際に裁量となります。
7. 賞与を適切な手順で変更・減額するには
減額や不支給の前に、まずその賞与がどのタイプかを分類してください。
- 基準と記録が明確な裁量賞与の場合 通知した基準を適用し、結果を伝える。
- 契約または合意に基づく債務の場合 減額には従業員の同意、または雇用条件を変更するための法定の手続が必要です。一方的に減らしてはいけません。
- 支給履歴が長く判断に迷う場合 通知前に法的助言を得て、交渉も検討します。たとえば今回は減額して支払い、来年から明確に裁量とする文言へ移行し、従業員に書面で了承してもらう方法です。
減額を受け入れない従業員が退職に至った場合、不当解雇の問題に発展し得ることに注意してください。労働裁判所は、労働裁判所設置および手続法B.E.2522第49条に基づき補償を命じることがあります。1年分の節約額より、透明な手順を選ぶことが重要です。あわせて組織再編と人員整理の計画もご覧ください。
8. 税務と、賞与を減額・無支給とする年の伝え方
税務 従業員に支払う賞与は、歳入法典第40条(1)の雇用所得にあたります。使用者は第50条(1)に基づき源泉徴収し、期限までに納付する義務があります。同年の給与との合算や年末調整などの計算方法は、歳入局または会計担当者に個別に確認してください。また、拠出の算定基礎に含まれるかどうかは、社会保障事務所に確認してください。
伝え方 悪い知らせの伝え方は、数字と同じくらい重要です。有効な進め方は次のとおりです。
- 年末前に早く伝える。噂で知らせない。
- 適用中の方針の文言を引用して、書面で伝える。
- 開示できる数字(前年比の売上や利益など)で理由を説明する。
- 個人の業績評価が従来どおり重視されるかを明確に伝える。
- 来年の計画(新しい基準、結果の通知時期など)を示す。
- 質問を受け付け、懸念に耳を傾ける。確信がないのに、来年埋め合わせると約束するなど、過大な約束をしない。
従業員への通知文例(例。事実に合わせて調整し、送付前に弁護士の確認を受けてください)
件名 B.E.2569年度の年次賞与の検討結果について
賞与方針の第___項に基づき、会社は、会社の業績と各人の成果に応じ、
毎年の会社の裁量により賞与を検討します。
B.E.2569年は、会社の業績が前年より___の面で低下しました(開示できる数字)。
そのため、会社は基準第___項に従い、月給の___の賞与を___日に支払うこととしました。
B.E.2569年の個人の成果は、___日までに各人にお知らせします。
ご質問は、___日までに人事部(連絡先___)へお寄せください。
B.E.2570年については、基準と目標を___までに事前に通知します。
9. 賞与方針の条項例
条項例(例。事業に合わせて調整し、使用前に弁護士の確認を受けてください)
年次賞与方針
1. 賞与の性質
年次賞与は、会社の業績および従業員の成果に基づき、会社が毎年の裁量により
支給を検討することがある特別な金員である。通常の労働の対価ではなく、
ある年に支給したことは、翌年以降の支給を義務付けるものではない。
2. 基準
2.1 会社は、毎年___日までに会社レベルの基準を通知する。
2.2 個人の基準は、評価サイクルの開始時に書面で合意した目標による。
3. 受給資格者
3.1 ___日時点で在職し、解雇予告中または退職予告中でない従業員。
3.2 自己の責めによらない理由でサイクルの途中に入社または退職した従業員には、
勤務月数に応じて按分して支払う。
3.3 試用期間中の従業員には、試用期間通過後に按分して支払う。
3.4 懲戒を理由とする減額または不支給は、就業規則を引用し、書面で通知する。
3.5 法定の休暇の取得は、それ自体を賞与減額の理由としない。
4. 結果の通知
会社は、___日までに理由の要約を付して書面で結果を通知し、
___日以内の質問を受け付ける。
5. 方針の変更
会社は、次回の評価サイクルに向け、___日以上前の通知により本方針を変更できる。
変更は、会社が確定額で支払うことに合意済みの終了したサイクルには影響しない。
第1項は文言を裁量にとどめる助けになりますが、すべての紛争で勝てることを保証するものではありません。裁判所は実際の運用も見るためです。また、第5項は、すでに確定額として合意した金員には適用されません。従業員が20人以上いる場合は、就業規則や雇用条件に関する合意に、本方針と矛盾する賞与の定めがないかも確認してください。人事書類・就業規則の整備サービスをご覧ください。
10. 賞与方針のチェックリスト
文言と文書
- 契約書、通知、就業規則、採用通知書で「支給する」か「支給することがある」かを確認した
- 文書上で固定賞与と変動賞与を分けた
- 方針の文言、通知、経営陣の発言が一致している
- 就業規則や合意に、新しい方針と矛盾する賞与の定めがない
基準と記録
- 会社レベルの基準と個人目標を、事前に書面で通知した
- 評価者、評価期間、採点方法が明確である
- 進捗メモと年末のまとめを保管している
受給資格
- 在職日、入社・退職者の按分、試用期間の扱いを定めた
- 懲戒の条件が就業規則を引用している
- 法定の休暇を取ったことだけで賞与を減らしていない
税務と資金
- 源泉徴収と社会保障の拠出について会計担当者に確認した
- 賞与のどの部分が退職補償金や時間外手当の計算で賃金とみられ得るかを検討した
伝え方
- 年末前に、減額または無支給の年の通知文を用意した
- 長年支給してきた賞与を変更する前に、弁護士に相談した
関連ガイド
- 営業KPIとコミッション制度の設計 — 変動報酬を売上に連動させる場合
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- 賃金・労働日・福利厚生の引き下げ — すでに合意した条件を変更するとき
- 使用者のための業績改善計画(PIP)とKPI — 評価基準と成果の記録
- 家族経営における役割と報酬 — 親族が受給者に含まれる場合
- 人事書類を弁護士に確認してもらうべき時期 — 方針を通知する前に確認すべき点
明確な賞与とは、書いた内容と実際の運用が一致している賞与です。裁量を残したいなら、基準に従って実際に裁量を行使する必要があります。保証するなら、自分が何に拘束されるのかを知っておく必要があります。
当事務所は、雇用契約書や賞与通知の文言の確認、方針と評価基準の作成、就業規則の確認、賞与を変更する際の従業員への伝え方の計画をお手伝いします。初回相談をご希望の方は、+66 92 254 2045 までお電話いただくか、詳細をお送りください。あわせて人事書類・就業規則の整備もご覧ください。
本ガイドはスワンワラ法律事務所(コンケン県の法律事務所、1986年設立)が発行したものです。一般的な情報であり、特定の事項に関する法的助言ではありません。

