離婚そのものは決められても、銀行へのローンが残る家で行き詰まる夫婦は少なくありません。権利証は誰の名義か、誰が借入契約に署名したか、頭金はどこから出たか、夫婦で合意した後に銀行は何と言うか。本ガイドはローン付き住宅だけを扱います。離婚全体、夫婦共有財産全体の分割、親権については離婚・親権・財産分与ガイドをご覧ください。配偶者の一方が外国人の場合は外国人配偶者との離婚ガイドも併せてお読みください。
結論
夫婦の間では、権利証の名義は最終的な答えではありません。家が固有財産か夫婦共有財産か、購入資金と返済資金がどこから出たかを見る必要があります。銀行との関係では借入契約上の名義が答えであり、夫婦間の合意は銀行を拘束しません。二つの問題は別々の線上にあり、両方に対処しなければなりません。
法律上の根拠(民商法典) 第1471条は固有財産を定めており、たとえば婚姻前から持っていた財産、個人的な使用や職業のための財産、相続または贈与で得た財産(固有財産と指定された場合)が含まれます。第1472条は代位を扱い、固有財産を使って、または固有財産と引き換えに得た財産は、固有財産のままとなり得ます。第1474条は夫婦共有財産を定め、婚姻中に配偶者が取得した財産や、遺言または贈与で得て夫婦共有財産と指定された財産が該当します。離婚時は、第1533条が夫婦共有財産を均等に分けると定め、第1534条は、一方が自己だけの利益のために処分した夫婦共有財産をその者の取り分に算入すると定めます。債務については、第1489条と第1490条が共同債務と個人債務を区別し、第1535条が婚姻終了時の共同債務の負担の考え方を定めます。
当事務所の実務的な見方 問題になるのは条文よりも証拠であることがほとんどです。頭金を誰が送金したか、どの口座から返済したか、借入契約に誰が載っているかです。交渉の前にこれらの書類を集め、合意書で所有権と銀行への債務の両方に対処することをお勧めします。
架空の事例 ニパさんとティーラポンさんは8年前にコンケンで婚姻届を出しました。結婚2年後に3,200,000バーツで家を買い、権利証はティーラポンさん一人の名義です。頭金400,000バーツはニパさんの婚姻前の貯金から出し、残りは二人が共同借入人となって銀行から借りました。月14,500バーツの返済はティーラポンさんの口座から払われています。二人はいま離婚する予定で、ニパさんは9歳の息子プームくんと家に住み続けます。
1. 権利証が一人名義の場合、家は誰のものか
権利証がティーラポンさん一人の名義でも、ニパさんに持分がないわけではありません。婚姻中に婚姻中の収入で買った家は、第1474条により夫婦共有財産となる可能性が高く、離婚時は第1533条により均等に分けます。反対に、婚姻前に買った家、固有財産と指定された相続や贈与で得た家、固有財産だけで買った家は、名義人の固有財産となり得ます。
固有財産だと主張する側は、通常、その出どころを示す必要があります。書類が不明確なら、裁判所は全体の事実を見て判断します。結果を事前に約束することはできません。
おおまかな分類の目安です。
| 資金と財産の出どころ | 想定される分類 | 備えるべき証拠 |
|---|---|---|
| 婚姻前に一方の資金で買った家 | その配偶者の固有財産(第1471条) | 売買契約書、購入日、送金記録 |
| 婚姻中に双方の収入で買った | 夫婦共有財産(第1474条) | 借入契約書、送金記録、口座明細 |
| 婚姻中に買ったが頭金は一方の固有の資金 | 個別に判断、一部が固有財産となる可能性(第1472条) | 頭金が個人口座から出たこと、送金時期の証明 |
| 親が一方に家の購入資金を渡した | 誰に渡し、どう位置づけたかによる | 贈与書面、メッセージ、送金記録 |
2. 銀行は夫婦間の合意の当事者ではない
「ティーラポンが払い続ける」という離婚合意は、夫婦二人だけを拘束します。銀行は従来の借入契約を持ったままです。共同借入人は全員、銀行が解除に同意するか、新しい借入で旧契約が完済されるまで、契約の定めるところにより銀行に対して債務を負い続けます。引き継いだ側が返済を怠れば、銀行は共同借入人に請求でき、信用情報への影響も二人に及びます。離婚合意が与えるのは、二人の間で相手に負担または精算を求める権利です。
婚姻中の債務については、第1490条が共同債務となる債務の種類を挙げ、第1535条が婚姻終了時の共同債務の負担の原則を定めています。合意書に使う前に最新の条文を確認してください。財産を半分ずつに分けたら銀行への債務も半分になる、と考えてはいけません。
3. ローン付き住宅の選択肢
| 選択肢 | 利点 | リスク | 必要書類 |
|---|---|---|---|
| 一方が家を保持し借換えする | 旧ローンが終了し、他方がはっきり解放される | 銀行が単独収入で審査するため、否決されることがある | 離婚合意書または覚書、収入資料、権利証、既存の借入契約書、銀行の同意書 |
| 売却して代金を分ける | 債務を一度で返済し、合意した割合で分けられる | 市場価格が債務を下回ることがある、抵当権抹消まで待つ、新居探し | 割合を定めた離婚合意書、銀行の完済額通知、売買契約書、権利証 |
| 一定期間共有を続ける(例:子が学校を終えるまで) | 子の住環境が安定し、すぐ借換え資金を用意しなくてよい | 共同借入人は銀行への拘束が続く、誰が払い、いつ共有を終えるかを決める必要がある、後で争いになる可能性 | 期間、支払者、修繕担当、売却・借換えの条件を定めた離婚合意書 |
| 銀行の同意を得て土地事務所で名義変更する | 合意どおり、住み続ける側の名義になる | 共同借入人を外さないと銀行が同意しないことがある、税金と手数料は当局の定めによる | 離婚合意書、銀行の同意書、権利証、双方の身分証と住民登録、婚姻・離婚の登録 |
子どもがいる場合、一定期間の共有は優しい案に聞こえますが、明確に書かないと新たな紛争の種になります。扶養料と親権のガイドで、養育費と家の問題を分けて考えてください。
4. 頭金と別居後の返済
婚姻前の貯金からの頭金 ニパさんが、400,000バーツは固有財産(たとえば婚姻前からの口座から売主へ直接送金)であると証明できれば、第1472条の代位の考え方を主張し、分割の前にこの部分を考慮するよう求める根拠があります。婚姻中のお金と混ざると、立証は難しくなります。
親からの頭金 誰に渡されたか、子の一人だけか双方か、どんなメッセージや書類があるかが重要です。固有財産と明示された贈与は重みがあります。貸付けだった場合は債務として扱い、共同債務かどうかを検討します。
別居後の返済 一人で払う側は送金記録を保管し、その支払いを精算に含めるかどうかを合意書に書いてください。半額を取り戻す権利が自動的に生じるわけではありません。合意、相手が住んでいる利益、事実関係によります。
相手が離婚前に資金や財産を移したと疑う場合は、離婚前の配偶者による資金移動・財産移転のガイドをご覧ください。相手の口座や携帯電話に許可なくアクセスしてはいけません。違法となる可能性があります。情報は交渉や裁判手続を通じて求めてください。
5. 離婚合意に基づく土地事務所での移転
一般に、手続きは書面の離婚合意書と、区役所(郡役所)での離婚登録(または判決・和解判決)から始まります。その後、夫婦双方が物件の所在地を管轄する土地事務所へ行き、権利証、本人確認書類、婚姻・離婚の登録、財産に関する合意書を提出します。家に抵当権が付いている場合、担当官は抵当契約を確認し、通常は抵当権者である銀行の同意書を求めます。登記の種類や税金は事実関係によります。移転日を決める前に土地事務所と歳入局に確認し、銀行から書面の回答が来るまで日取りを決めないでください。
外国人配偶者がタイ人配偶者の名義で家を買った場合は、配偶者や子の名義での住宅・土地購入ガイドと外国人配偶者のための用益権ガイドも参照してください。
6. 離婚合意書の条項例(要調整)
第…条 コンケン県、……郡、……町にある権利証番号……の家屋および土地は、
現在、……銀行に対し借入契約番号……で抵当権が設定されており、……日時点の残債は約……バーツである。
1. 夫婦は、……(甲)が家に居住し、……日から銀行へのローンを自ら返済することに合意する。
甲は期日どおりに返済し、四半期ごとに支払いの証拠を乙に渡す。
2. 甲は……か月以内に、借換えの申請または乙を借入契約から外す手続きを行い、
乙は必要書類に署名して協力する。
3. 期間内に銀行の承認が得られない場合は、家を売却し、銀行の完済額を差し引いた代金を
……:……の割合で分ける。
4. 甲は、甲の不履行により乙が銀行へ支払う事態になった場合、法定利息を付して乙に償還することを認める。
本条は銀行を拘束しない。共同借入人は、銀行が書面で解除するまで借入契約に基づき銀行に責任を負う。
5. ……から出た頭金……バーツは、……(分割前に返還する/返還しない)として扱う。
6. 銀行が書面で同意した後、双方は……日以内に土地事務所で移転登記を行う。
法令で必要な手数料と税金(ある場合)は……が負担する。
これはひな形です。事実関係に合わせて調整し、実際の署名の前に弁護士の確認を受けてください。
7. よくある間違い
- 権利証を一人の名義に移せば、他方が銀行への債務から解放されると思い込む。実際は共同借入人のままである。
- 借換えの期限や不履行時の結果を決めずに「払い続ける」とだけ書く。
- 頭金や返済の送金記録を保管しない。
- 相手が住み続けることを口約束だけで済ませる。子どもがいると争いはさらに増える。
- 家をめぐる交渉の材料に子どもを使う、あるいは他方の親に告げず子どもを別の場所へ移す。してはいけません。裁判で不利になる可能性があります。
家について合意する前のチェックリスト
家と銀行の書類
- 権利証の写しと売買契約書
- 借入契約書、抵当契約書、借入人・共同借入人の一覧
- 銀行の残債通知と完済額の通知
- 返済履歴と送金記録
資金の出どころ
- 頭金の送金記録と出金元の口座
- 親からの資金の証拠、誰に渡したか、貸付けかを示すメッセージ
- 婚姻登録と家の購入日
決定事項
- 選択肢(借換え、売却、共有、名義変更)を選び、期日を決める
- 銀行が同意するか、どんな条件かを書面で尋ねる
- 家、債務、精算を網羅した離婚合意書を作成し、弁護士に確認してもらう
関連ガイド
- 離婚・夫婦共有財産の分割・親権 — 離婚と財産分与の全体像
- タイ人配偶者や子の名義での住宅・土地購入 — 名義人と支払った人が異なる場合
- 養育費と親権 — 子の問題を家の問題と分けるために
- 外国人配偶者との離婚 — 配偶者の一方がタイ人でない場合
- 外国人配偶者のための用益権 — 外国人が土地を所有できない場合の選択肢
- 婚前契約で何を決めるか — 財産紛争を事前に防ぐ
- 離婚前の配偶者による資金移動・財産移転 — 財産が消えていると疑うとき
権利証は登記上の所有者を示しますが、夫婦間では資金の出どころが決め手であり、銀行に対しては書面による解除または借換えがなければ債務から解放されません。
当事務所は、家とローンに関する離婚合意の交渉と起案、土地事務所での移転の調整をお手伝いしています。初回相談をご希望の方は、お電話 +66 92 254 2045 または詳細をお送りください。あわせて家族法業務もご覧ください。
本ガイドはスワンワラ法律事務所(コンケン県の法律事務所、1986年設立)が発行したものです。一般的な情報であり、特定の事項に関する法的助言ではありません。

