契約の工事が半分まで進んだところで、顧客側の担当者がLINEグループに「もう1か所追加でお願いします。進めてください」と書き込みます。現場チームは顧客の機嫌を損ねたくないので、そのまま作業します。価格の話は誰もしていません。追加作業の請求書を送ると、顧客は「元の工事に含まれていると思っていました」や「私に承認する権限はありません」と返してきます。さらに、追加作業のせいで納期が遅れたと主張することもあります。
この種の問題は、途中で業務範囲が動く建設、設置、設計、サービスの仕事でよく起こります。本ガイドは、会社が何を切り分けるべきか、チャットをどう保存するか、指示した人の権限をどう確認するか、納期への影響をどう記録するかを説明します。関連するテーマは、口頭契約、会社契約における電子署名、承認権限の委任マトリクスのガイドにあります。
結論
追加作業の代金を回収するには、会社は次の4点を順に立証する必要があります。その作業が当初の業務範囲の外であること。顧客またはその代理人が指示した、もしくは知ったうえで受け入れたこと。指示した人が顧客の会社を拘束する権限を持っていたこと(または顧客が後から追認したこと)。そして価格または価格の決め方が合意されたこと、少なくとも金額の合理的な根拠を会社が示せることです。
法律上の枠組み LINEのメッセージは、電子データであるというだけで法的効力を否定されません(電子取引法 B.E. 2544 第7条)。第8条は、法律が書面を要求する場合に、アクセスでき、意味を変えずに再利用できる電子データを書面とみなします。第9条は電子署名の要件を定め、第11条は、裁判所が電子データを証拠として採用し、作成、保存、伝達の方法の信頼性によって証明力を判断することを定めています。指示した人が顧客を拘束するかどうかは代理の問題で、民商法典第797条、第821条の表見代理、第823条の追認が関わります。ある作業が当初の範囲に入るかどうかは、第368条に従い、信義に基づいて契約を解釈して決まります。遅延と違約金は第379条から第383条の問題です。
当事務所の実務的な見方 追加作業をめぐる争いは、メッセージの文面よりも、価格と権限で負けることがほとんどです。担当者が「進めてください」と書き、誰も価格を書かず、納期がどう動くかも書いていません。当事務所は、範囲外の作業には、着手前に必ず範囲、価格、納期への影響を確認するメッセージを出すことを、会社の規律にするよう勧めています。同じチャットで顧客が承諾する短いメッセージで十分です。
本ガイドで通して使う仮の事例は、ナコーンラーチャシーマーの小規模な屋根上太陽光設置会社です。精米所の屋根にパネルを設置する工事を860,000バーツで受注し、納期は45日でした。工事の途中で、精米所の工場長がLINEグループで、パネルを2棟目の倉庫の屋根にも広げるよう、価格に触れずに指示しました。会社は後に、追加作業を94,000バーツと算定しました。追加作業のせいで納期は12日後ろにずれました。以下、「太陽光会社」と「精米所」と呼びます。
1. その作業は当初の業務範囲の内か外か
証拠を考える前に、そもそも会社が追加の代金を請求できるかを答える必要があります。作業が当初の範囲に明らかに含まれるなら、顧客がチャットで指示したとしても追加請求はできません。次の順で書類と照らし合わせてください。
- 契約書と別紙、見積書、図面、数量明細書(BOQ)、業務範囲書。
- 食い違う見積書や発注書。2つの書類が合わない場合は、見積書と発注書の条件が食い違う場合のガイドをご覧ください。
- 合意内容を記録した議事録や以前のメッセージ。
- 業界の慣行。裁判所は第368条に基づく解釈でこれを用います。同条は、契約を信義に従い、通常の慣行を考慮して解釈するとしています。
| 指示の種類 | 通常の位置づけ | 取るべき対応 |
|---|---|---|
| 図面や作業リストに明記されている内容 | 当初の範囲内 | 契約どおり実施し、追加請求はしない |
| 書類にはないが、当初の作業を使える状態にするのに必要なもの | 灰色。文言と慣行による | 着手前に追加作業と考える旨を伝え、書面での見解を求める |
| 顧客が求める追加の面積、数量、項目 | 当初の範囲外 | 第5項の変更指示書の手順を使う |
| 合意した回数を超える設計の修正 | 契約を確認する | 修正回数の条項を根拠にする |
事例では、2棟目の倉庫の屋根は当初の図面にも見積書にもないため、範囲外であることは明らかです。弱点は範囲ではなく、価格がないことです。
2. 「進めてください」は顧客を拘束するか
契約は一般に方式を要しません。そのため、チャットでの指示は申込みになり得ますし、顧客の目に触れる場所で作業を始め、顧客の行動も加わると承諾になり得ます。これは口頭契約のガイドで説明したとおりです。問題は細部にあります。
- 指示の範囲。 「もう1か所見てください」と「進めてください」は違います。前者は単なる問い合わせの可能性があります。
- 価格。 価格の話が出ていなければ、顧客は、追加の支払いに合意したことはない、あるいは元の価格に含まれていると思っていたと言えます。
- 本契約の条項。 多くの契約は、変更は書面で、権限のある者が署名して行うと定めています。顧客はこれをすぐに持ち出します。ただし、行為による変更が立証できる場合もあります。
- 作業の受入れ。 顧客が追加作業をすでに使用している、または一部を支払っている場合、その状況証拠はメッセージそのものより重くなります。
価格がチャットのどこにも現れていないなら、「進めてください」が、会社の頭の中にだけあった価格への合意だと裁判所が読むことは期待しないでください。
3. LINEのチャットを証拠として使うには
電子メッセージは証拠にできますが、証明力は保存方法に左右されます。電子取引法 B.E. 2544 第11条により、裁判所は、データの作成、保存、伝達の方法の信頼性、完全性がどう保たれたか、発信者がどう特定されたかを見ます。
| 方法 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| スクリーンショット | 速くて読みやすい | 断片しか写らず、編集しやすく、出所の証明が難しい |
| エクスポートしたチャットファイル | 会話全体と日時、送信者名が残る | 元のファイルを保管し、エクスポートの方法を説明できる必要がある |
| 端末が写るように画面を撮影 | そのアカウントと端末のものだと示せる | 手間がかかり、確認する人が必要 |
| 顧客にメールで再確認してもらう | 誰が送ったかの争いが減る | その時点で行う必要があり、争いになってからでは遅い |
当事務所が勧める実務は次のとおりです。
- スクリーンショットとエクスポートファイルの両方を保存する。 重要な指示が来たら、その日のチャットをエクスポートしてプロジェクトのフォルダに入れ、従業員の私用スマートフォンではなく、会社の保管場所にバックアップします。
- メッセージを削除しない。バックアップなしに端末を替えない。 抜けや削除された部分があると、裁判所は完全性を疑います。
- グループの参加者を記録する。 顧客の担当者、技術者、購買担当が入っているLINEグループは、誰が指示を知っていたかを示します。参加者と、その参加日・退出日を記録してください。グループにいて異議を述べなかった人は、認識の立証に役立つことがあります。
- アカウントを人物に結びつける。 LINEの表示名は変更できます。名刺の電話番号との一致や、同じアカウントから顧客が送った書類など、そのアカウントが誰のものかを示す証拠を残してください。
- 署名。 第9条は、署名者を特定し意思を示す電子署名に関する規定です。署名のないチャットでも意思の証拠にはなり得ますが、契約に署名することとは別の話です。会社契約における電子署名のガイドをご覧ください。
争いの金額が大きいときは、チャットの出所を誰が証言するかなど、電子証拠を裁判所にどう提出するかを、最初から弁護士に設計してもらってください。
4. 顧客側で誰が価格を承認する権限を持つか
現場で指示を出す人は契約に署名した人ではない、と気づく会社は多く、顧客は担当者に権限はなかったと主張します。3つの層で確認してください。
- 実際の権限(第797条)。 代理人とは、本人が代理して行為することを授権した者です。委任状、組織図上の役職、権限のある取締役が分かる会社の登記事項証明書、そして本契約でプロジェクト窓口や代表者を定めた条項を見ます。
- 表見代理(第821条)。 顧客の会社がある人を代理人として振る舞わせた場合、たとえばその人をプロジェクトマネージャーに任命し、すべての作業の窓口にした場合や、以前その人が承認した追加作業に代金を支払った場合、顧客の会社は善意の第三者に対して責任を負います。作業をする会社は、その人に権限があると善意で信じていなければなりません。
- 追認(第823条)。 指示した人に実際の権限がなくても、顧客の会社が事情を知ったうえで受け入れた場合、たとえば追加作業を使用した、一部を支払った、知りながら異議を述べなかった場合は、追認となり、顧客の会社を拘束することがあります。
会社が保管しておくべきもの
- 指示した人の氏名、役職、職務。
- 同じ人が以前に追加作業を指示し、顧客が争わず支払った事例。
- この人を窓口または承認者と記した議事録。
- 追加作業を見て異議を述べなかった、本当に権限のある人のメッセージ。
自社側にも同じことが当てはまります。現場の従業員が誰にも通さず追加の指示を受けると、会社は知らないうちに拘束されているおそれがあります。誰が追加作業を引き受け、会社に代わって価格を確認できるかを決めるには、承認権限の委任マトリクスをご覧ください。
5. 着手前の変更指示書(バリエーションオーダー)の手順
争いを減らす最も効果的な方法は、範囲、価格、納期への影響の3点が確認されるまで、追加作業に着手しないことです。契約が様式を定めていない限り、変更指示書は長い書類である必要はなく、顧客が承諾する短いメッセージで足ります。
- 依頼を受ける。 誰が、いつ、何を頼んだかを記録します。
- 評価する。 範囲外かどうかを確認し、価格、材料、人手、納期への影響を見積もります。
- 確認メッセージを送る。 現場の窓口だけでなく、権限のある人に送ります。承諾がなければ会社は追加作業に着手しないと明記します。
- 承諾を待つ。 「承認します」の返信または署名済みの変更指示書を求め、権限のある人から来たという証拠を残します。
- 着手する。 作業前後の写真と、時間と材料の記録を残します。
- 請求書に反映する。 変更指示書の番号を引用した請求書を発行します。
追加作業の確認を求めるメッセージの例(例。実際の仕事に合わせて調整してください)
____ 様(精米所の承認権限者)
____ 様が ____ 日にLINEグループで指示された、2棟目の倉庫の屋根への作業拡大は、
契約番号 ____ の範囲外のため、次のとおり変更指示書 VO-01 をご提案します。
1) 範囲:____(添付の図面のとおり)
2) 追加作業の価格:____ バーツ(付加価値税を含む/含まない)。支払方法:____
3) 納期への影響:____ から ____ に変更(____ 日延長)
4) 追加作業は、ご承諾をいただいてから着手します。
「VO-01 を承認します」とお名前と役職を添えてご返信ください。
緊急だからと顧客に先に着手するよう迫られた場合は、「指示された追加作業を実施します。価格と納期は ____ 日以内に確認します。着手してよいかご返信ください」といった短いメッセージを送り、できるだけ早く価格を確定させてください。
6. 納期への影響を記録して、会社が違約金を課されないようにする
追加作業には時間がかかりますが、本契約は元の納期のまま数えられることがあります。記録がなければ、顧客は後から違約金を満額で差し引くかもしれません。これは価格とは別の問題です。顧客が支払額から違約金や損害賠償を差し引く場合のガイドをご覧ください。
第379条から第383条の違約金は、債務者が合意どおりに履行しない場合に支払わなければならない金額です。第383条は、裁判所が著しく高額な違約金を減額できると定めていますが、減額は裁判所の裁量であり、主たる戦略にすべきではありません。重要なのは、追加作業の指示、情報提供の遅れ、現場への立入りを認めないことなど、顧客に起因する遅延は抗弁になるということです。会社は、遅延が自社の責めに帰さない証拠を保管しておく必要があります。また、期限内に提供した履行を顧客が拒んだ場合は、第207条の債権者遅滞となり得ます。
追加作業が生じたときに記録すべきこと
| 項目 | 精米所の事例での例 |
|---|---|
| 指示を受けた日と顧客が承諾した日 | LINEグループでの指示と、承認者が確認した日 |
| 元の納期と新しい納期 | 45日目に12日を加える |
| ずれの原因 | 追加作業、現場の立入り待ち、情報待ち |
| 顧客がずれを認めたメッセージ | 新しい納期を受け入れたメッセージ |
| 本工事への影響 | 技術者が追加作業に回された |
本契約にも、追加作業と顧客に起因する遅延は、合意した分だけ納期を延長すると書いておいてください。違約金に影響する文言を使う前に、弁護士に相談してください。
7. 顧客が支払いを拒んだ場合
率直な見立て 顧客が追加作業を指示し、会社が実際に作業したのに価格の合意がない場合、会社は相当な対価を求められることが多いといえます。たとえば第406条の不当利得、または顧客が受け取った仕事についての第587条と第602条の報酬の規則に基づきます。ただし、金額は争いになります。顧客は、高すぎる、元の仕事に含まれていた、利益を受けていないと主張します。結果は事実関係と裁判所の裁量によるため、あらかじめ結果をお約束することはできません。
当事務所が勧める順序
- 証拠を集める。 エクスポートしたチャット、当初の見積書、図面、作業前後の写真、時間と材料の記録、顧客が作業を使用している証拠。
- 金額を切り分ける。 追加作業は本工事とは別の請求書にします。金額の根拠は説明できなければなりません。たとえば、当初の見積書の単価や、比較できる市場価格です。
- 争いのない部分を先に請求する。 顧客が本工事の代金も未払いなら、まずそちらを請求します。2つの問題を一緒にして、顧客に全額を払わない口実を与えてはいけません。法人顧客の未払い請求書のガイドをご覧ください。
- 交渉する。 作業の書面での受入れと引き換えに少し減額する、分割払いにするなど、解決の道を示します。和解は書面にします。
- 督促状を送る。 追加作業の項目、指示の日付、指示者、請求額、支払期限を記します。当事務所の督促状サービスで、隙のない文面の作成をお手伝いします。
- 反論に備える。 顧客が、会社が契約に違反した、または納期に遅れたと返してきたら、契約違反を主張する通知書への対応を準備するのガイドをご覧ください。また、契約を確認せずに本工事を止めてはいけません。会社が契約違反を主張されるおそれがあります。
顧客が受入れ書に署名しないことを理由に追加作業を認めない場合は、顧客が検収書に署名せず請求書を出せない場合のガイドをご覧ください。
8. チェックリスト:追加作業と証拠
追加作業に着手する前
- 作業が契約、見積書、図面の範囲外であることを確認した
- 範囲、価格、納期への影響を記したメッセージまたは変更指示書がある
- 承諾した人は権限を持つ、または委任の証拠がある
- 指示した人と承認した人の氏名、役職、電話番号を記録した
作業中と証拠の保管
- 指示の日のチャットをエクスポートし、スクリーンショットとエクスポートの両方を保存した
- LINEグループの参加者と、その参加日・退出日を記録した
- 作業前後の写真を撮り、追加作業の時間、材料、人手を記録した
- 顧客が追加作業を知っていた、または使用していた証拠を保管した
納期
- 元の納期、新しい納期、ずれた理由を記録した
- 新しい納期を顧客が認めたメッセージを得た
- 顧客に起因する遅延の証拠を保管した
顧客が支払いを拒んだ場合
- 追加作業を別の請求書にし、金額の根拠を説明できる
- 争いのない金額を先に請求した
- すべての書類を引用した督促状を送った
- 作業の停止や引渡しの留保の前に契約を確認した
関連ガイド
- 口頭契約はタイで有効か — 書類なしで成立した合意の考え方
- 会社契約における電子署名 — チャットと契約署名の違い
- 承認権限の委任マトリクス — 会社に代わって価格を確認する人を決める
- 法人顧客の未払い請求書 — 顧客が期限に支払わないときの手順
- 契約違反を主張する通知書への対応を準備する — 顧客が納期遅れを主張してきたとき
- 見積書と発注書の条件が食い違う場合 — 2つの書類で業務範囲が異なるとき
- 顧客が支払額から違約金や損害賠償を差し引く場合 — 顧客が遅延を理由に代金を差し引くとき
価格も承認者も納期の記録もない追加作業は、顧客があらゆる点で争える仕事です。着手前に、この3点を必ず確認してください。
当事務所は、契約と業務範囲の確認、変更指示書の雛形の作成、チャット証拠と指示者の権限の確認、追加作業の督促状の作成をお手伝いします。初回相談をご希望の方は、+66 92 254 2045 までお電話いただくか、詳細をお送りください。あわせて督促状サービスと契約書・ビジネス文書の作成もご覧ください。
本ガイドはスワンワラ法律事務所(コンケン県の法律事務所、1986年設立)が発行したものです。一般的な情報であり、特定の事項に関する法的助言ではありません。

