経営者の多くが同じことを言います。「この商品はよく売れているのに、なぜ現金が残らないのか」。答えは棚や倉庫にあることが多いものです。仕入先に払った資金が戻らないのは、売れる以上の在庫が積み上がっているか、勝ち頭に見える商品が手数料を引くと儲けがほとんど残らないからです。
本ガイドでは、商品別の利益、販売消化率、在庫日数、GMROI、保管コストを取り上げ、発注・縮小・処分・撤退の判断表と、資金が固定される前に仕入先と交渉しておくべき契約条項を整理します。例の数字はすべて仮定のものです。
結論
売れ筋であることと、資金繰りが良いことは別です。商品(SKU)ごとに、チャネル費用後の1個あたり利益、販売消化率、在庫日数、GMROI、欠品日数の5つを測り、年間の保管コストと比べます。よく売れて粗利が良く、在庫が適正な商品は追加発注に値します。動きが遅い、粗利が薄い、期限が近い商品は、発注を小口にする、販促で処分する、取り扱いをやめる、のいずれかです。
法的な枠組み 在庫管理の方法を定めた法律はありません。ただ、資金が固定される原因は契約にあることが多く、最低発注数量、返品権、委託販売、期限条項はいずれも契約や発注書の問題です。在庫の除却や廃棄には会計・税務上の影響があるため、先に会計担当者に書類について相談してください。
当事務所の実務上の見方 発注前に発注条件と返品条件を交渉するほうが、商品が倉庫に入ってから対処するより簡単で安く済みます。
1. 売れ筋でも資金を食うのはなぜか
| 原因 | 起こり方 | 対応 |
|---|---|---|
| MOQが販売力を上回る | 大口発注で単価は下がるが、数か月分の資金が固定される | 割引と保管コストを比べ、分割納品を交渉する |
| リードタイムが長い | 先々まで発注するため、安全在庫が大きくなる | 予備の仕入先を持つ。1社の工場に依存する場合のバックアップ計画を参照 |
| 手数料後の粗利が薄い | 手数料、送料、プラットフォーム割引が1個あたりの利益を削る | チャネル別に利益を出す。複数プラットフォームの突合を参照 |
| 動きの遅いバリエーション | 遅い色・サイズ・型番が同じロットで入る | バリエーションごとに分けて発注し、品揃えを絞る |
| 支払サイトが販売サイクルより短い | 顧客の入金より先に仕入先へ払う | 条件交渉や前受金で対応。黒字でも資金が足りない場合を参照 |
2. 商品別に計算する指標
チャネル費用後の1個あたり利益
販売価格から、商品原価とチャネル費用(手数料、決済手数料、自社負担の送料、割引)を引きます。手数料を引く前の粗利は使わないでください。見積書で45パーセントと見える商品でも、プラットフォーム経由ではほとんど残らないことがあります。
販売消化率(sell-through)
期間中の販売数を、(販売数+期末在庫)で割ったものです。低いほど在庫が滞留しています。
在庫日数
期末在庫を、1日あたりの平均販売数で割ったものです。現在の在庫があと何日分かを示します。リードタイムと発注サイクルを大きく超えるなら、発注しすぎです。
GMROI
年間の粗利益を、原価ベースの平均在庫額で割ったものです。以下の例では、計算を簡単にするため、90日間の粗利益を4倍し、平均在庫の代わりに期末在庫を使っています(概算)。
欠品日数
顧客が求めているのに在庫がなかった日数です。失った利益は、欠品日数に1日あたり平均販売数と1個あたり利益を掛けて見積もります。
3. 6つのSKUによる計算例
仮定の例です。90日間、1個あたり利益はチャネル手数料控除後です。数字はすべて再計算して確認しています。
| SKU | 価格 | 原価 | 手数料 | 1個あたり利益 | 販売数 | 期末在庫 | 原価ベース在庫額(バーツ) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A 最多販売 | 450 | 250 | 25% = 112.5 | 87.5(19.4%) | 600 | 900 | 225,000 |
| B | 890 | 420 | 12% = 106.8 | 363.2(40.8%) | 180 | 150 | 63,000 |
| C | 320 | 150 | 15% = 48 | 122(38.1%) | 240 | 300 | 45,000 |
| D | 1,200 | 700 | 20% = 240 | 260(21.7%) | 40 | 360 | 252,000 |
| E | 150 | 60 | 10% = 15 | 75(50.0%) | 900 | 180 | 10,800 |
| F | 580 | 300 | 18% = 104.4 | 175.6(30.3%) | 30 | 500 | 150,000 |
| SKU | 90日間の粗利益(バーツ) | 販売消化率 | 在庫日数 | GMROI(年間) | 欠品日数 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 52,500 | 40% | 135 | 0.93 | 0 |
| B | 65,376 | 55% | 75 | 4.15 | 12 |
| C | 29,280 | 44% | 113 | 2.60 | 0 |
| D | 10,400 | 10% | 810 | 0.17 | 0 |
| E | 67,500 | 83% | 18 | 25.00 | 6 |
| F | 5,268 | 6% | 1,500 | 0.14 | 0 |
原価ベースの在庫合計は745,800バーツ、90日間の粗利益合計は230,324バーツ、全体のGMROIは約1.24です。
この例から分かること
- Aは販売数が最も多いものの、225,000バーツの在庫を抱え、1個あたり利益は19.4パーセントにとどまり、GMROIは1未満です。
- DとFは合わせて402,000バーツを抱えます。在庫全体の半分超ですが、90日間の粗利益は合計15,668バーツしかありません。
- BとEはそれぞれ12日、6日欠品しました。失った利益は、Bが約24個×363.2=8,716.8バーツ、Eが約60個×75=4,500バーツです。
- Eは最も小さい商品ですが、固定した資金1バーツあたりの稼ぎは最大です。
4. 在庫を持つコストの内訳
| 項目 | 仮定の例(在庫額に対する年率) | 備考 |
|---|---|---|
| 資本コスト | 12% | 借入金利、または機会費用 |
| 保管・作業 | 3% | 倉庫賃料、棚、人件費 |
| 破損・紛失 | 2% | 破損、湿気、盗難、棚卸差異 |
| 期限切れ・陳腐化 | 2% | 期限のある商品、流行、季節 |
| 保険 | 1% | 在庫を対象とする保険がある場合 |
| 合計 | 20% | 実際の事業に合わせて調整する |
例では、Dの原価ベース在庫額は252,000バーツなので、年20パーセントの保管コストは50,400バーツです。一方、年間の粗利益は約41,600バーツ(10,400×4)です。この商品は在庫として持つだけで赤字になっています。
5. ABC分析とXYZ分析の概要
- ABCは金額で順位をつけます。Aは売上や粗利の大半を生み、Bは中位、Cは多数の少額品目です。
- XYZは需要の変動で分けます。Xは安定、Yはやや変動、Zは予測が難しいものです。
- AX品目は適正量を頻繁に発注し、注意深く監視します。CZ品目は在庫を持たず、受注発注にするか取り扱いをやめます。
- 売上だけでなく、手数料後の利益と固定された資金で分類してください。
6. 判断表:発注、縮小、処分、撤退
| 指標のパターン | 判断 | 上の例 |
|---|---|---|
| 販売消化率が高く、在庫日数がリードタイム未満で、GMROIが高く、欠品が多い | 追加発注し、緩衝在庫を増やす | B、E |
| よく売れるが1個あたり利益が薄く、GMROIが1未満で、在庫日数が長い | 発注を小口にし、MOQ、価格、チャネル手数料を交渉する | A |
| 販売は中程度で、GMROIは許容範囲、わずかに過剰 | 維持し、発注サイクルを短くする | C |
| 販売消化率が低く滞留が長いが、1個あたり利益は良い | セットや販促で処分し、その後は発注を止める | D |
| 販売消化率が極めて低く、GMROIが保管コストを下回る | 撤退し、第7項のとおり在庫を処分する | F |
| 期限のある商品で、在庫日数が残存期間を超える | 直ちに処分し、再発注しない | 該当するすべて |
表の基準は固定ではありません。自社の保管コストとリードタイムから決めてください。
7. 不良在庫をどう処分するか
- 契約や発注書で認められていれば、仕入先に返品します。条件、期限、手数料を確認します。
- 売れ筋とセットにして、一緒に動かします。
- アウトレットやロット買取業者に売ります。保管コストに見合わないなら、原価割れで売るほうが持ち続けるより良い場合があります。
- 破損、期限切れ、販売不能になった商品は、除却または廃棄します。
在庫の廃棄や除却に関する条件と書類は、歳入局が定めています。本ガイドは詳細を確認していません。先に会計担当者に書類について相談してください。品目リスト、原価額、写真または動画、承認者、廃棄日などが対象です。
安全上の問題がある商品やリコール対象の商品には、別の義務があります。製品リコールと、ラベルの期限表示については消費者保護法に基づく商品ラベルを参照してください。
8. 在庫が滞留する前の契約面
仕入先と交渉すべき条項
- MOQと分割納品。発注数量の縮小や分納を交渉します。確定した発注書は、全数量について拘束力を持つことが多いものです。見積書と発注書の条件が食い違う場合は見積書と発注書の条件の食い違いを参照してください。
- 返品・交換の権利。期限、状態、手数料を明記します。書かれていなければ返品できるとは考えないでください。
- 期限。納品時の最低残存期間と、残存期間が短すぎる商品の受領拒否権を定めます。
- 価格と数量割引。割引が累計発注か単発発注かを明記します。
- 買い切りではなく委託販売。固定資金は減りますが、在庫紛失や売上代金の送金のリスクが増えます。委託在庫の紛失や代金未払いを参照してください。
工場の切り替えや代理店契約の終了
残った在庫を誰が所有し、誰が負担するのか。OEM工場の切り替えと在庫の所有と代理店契約の終了を参照してください。
9. 月次の在庫レビュー手順
- 全SKUの販売数、期末在庫、1個あたり原価を同じ日付で取り出します。
- 手数料後の利益、販売消化率、在庫日数、GMROIを計算します。
- 第6項のパターンに当てはまるSKUに印をつけます。
- 残存期間の短い期限付き商品を確認します。
- 誰がいつまでに何をするかを決めて記録し、月次の経営会議に持ち込みます。月次経営会議を参照してください。
- 更新時期の契約や次回発注の契約を見直します。
10. よくある間違い
- 売上だけを見て、手数料後の利益や固定された資金を見ていない。
- 割引目当てでMOQどおりに発注し、保管コストを計算しない。
- 欠品日数を記録せず、失った売上が見えない。
- 損失を認めたくなくて、不良在庫を抱え続ける。
- 返品や期限の条件を読まずに発注書にサインする。
- 記録を残さず、会計担当者にも聞かずに商品を廃棄する。
- 直近ロットを別価格で仕入れたのに、古い原価で計算する。
11. チェックリスト
- チャネル手数料後の1個あたり利益を載せた商品別の表がある
- 販売消化率、在庫日数、GMROIを毎月計算している
- 自社の年間保管コストを見積もっている
- ABCとXYZの分類を少なくとも年1回行っている
- 発注、縮小、処分、撤退の基準を決めている
- 仕入先契約のMOQ、返品権、期限条項を確認した
- 不良在庫の処分計画に期限がある
- 廃棄や除却の前に、書類について会計担当者に相談した
- 月次の判断と担当者を記録している
関連ガイド
- 黒字でも資金が足りない場合 — 帳簿上は黒字なのに現金が不足するとき
- 委託在庫の紛失や代金未払い — 買い切りではなく委託販売
- 見積書と発注書の条件の食い違い — 発注書類の条件
- 1社の工場に依存する場合のバックアップ計画 — リードタイムのリスクを減らす
- 複数プラットフォームの売上と手数料の突合 — チャネル別の本当の利益
- 代理店契約の終了:在庫と顧客 — 契約終了時の在庫
資金を固定する売れ筋とは、チャネル費用後の利益と保管コストをまだ測っていない商品です。商品ごとに毎月測り、判断表を使い、発注前にMOQ、返品、期限の条件を交渉してください。
当事務所は、仕入先との売買契約、発注書、委託販売契約、返品条件の確認と作成を支援します。初回相談をご希望の方は、+66 92 254 2045 までお電話いただくか、詳細をお送りください。あわせて契約書・ビジネス文書、会計・税務もご覧ください。
本ガイドはスワンワラ法律事務所(コンケン県の法律事務所、1986年設立)が発行したものです。一般的な情報であり、特定の事項に関する法的助言ではありません。

